王泥喜 法介…紺 | |
成歩堂 龍一…黒 | |
成歩堂 みぬき…赤 | |
裁判長…緑 | |
牙琉検事…茶 | |
宝月 茜…桃 | |
絵瀬 まこと…黄緑 | |
絵瀬 土武六…灰 | |
或真敷 バラン…薄橙 | |
葉見垣 正太郎…橙 | |
或真敷 ザック…青 | |
糸鋸 圭介…黄土 | |
原灰…黄 | |
ラミロア…藤 | |
牙琉 霧人…紫 |
原: |
あれは、午後2時ごろ。 急に法廷内が騒がしくなって。 ナニゴトかと ドアを開けようとしたところ‥‥ バン! といきなりドアが開いて、 目の前に、オッサンのカオが! |
成: |
つまり、あなたのほうに アヤシイ人影が逃げてきた、と。 |
原: |
本官、いやしくも。法廷係官の ハシクレでありますからして‥‥ ろうかを逃げていくシルクハットを 追いかけたわけであります! |
成: |
ここに、裁判所の上面図が あるんですけど、これで言うと‥‥ |
原: |
ここが、第7法廷であります。 本官はここで待機しておりました! ひとりぼっちで! 友もおらずッ! |
成: |
なるほど‥‥そこに、 或真敷 ザック氏が逃げてきた、と。 |
原: |
カレはこう、カドを曲がってヒラと 逃げていきました。 本官は、とっさに。 パッとこう、 追いかけたのであります! カドを曲がったとき‥‥ あの魔術師が、被告人の控え室に 逃げこむところが見えました。 だからして、本官も。 その背中を追って、 そこに飛び込んだのであります! そう! 忘れもしない、 この第2控え室でありますッ! |
成: |
この部屋、だったんですか‥‥ (たしかに、どこにも 隠れられる場所はないな‥‥) |
原: |
本官‥‥その。 信じられませんでしたッ! この部屋で、ヤツは! 魔術師は! ケムリのように消えたであります! いや! いっそ、ケムリすら残さず、 消えっちまったでありますッ! |
成: |
‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥ そんなバカな。 |
原: |
あッ! それ! 今のそれ! その、それ! 何気ないヒトコト! 本官が、そのヒトコトに どれだけ苦しんできたか‥‥ ‥‥ショージキ。 やるせないでありますゥゥゥゥッ! |
成: |
す、すみません! もう言いませんから。 でも。人間が”消える” なんて、あり得ませんよ。 この控え室、よく探したんですか? |
原: |
‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥ さ。探しましたとも。 |
成: |
‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥ (なんだ? 今の”間”は) |
原: |
な。な。な。なんでもあ。 あ。あ。あ。ありませんであります。 ええ、そう! 本官。 ありませんでありましたともッ! |
成: |
(原灰さん‥‥なにか、 隠している気がするぞ‥‥) |
成: |
ザックさんが、 この部屋で”消失”した‥‥ |
原: |
マチガイありません! 本官。この目でたしかにッ! 赤いシルクハットに マントのオトコが‥‥ この部屋に 逃げこんだのであります! |
成: |
(シルクハットに、マント‥‥ たしかに、ザックさんだよな) |
原: |
そして、ごらんのとおり! この部屋に、隠れる場所は ないのであります! あのときの本官は。本官は‥‥ もう、トホーに暮れるしか本官は。 |
成: |
‥‥‥‥‥‥‥‥ もしかして。 ”今”は、 そうじゃないのでは‥‥? |
原: |
本官ッ! ど。ど、ど。どーいうイミで ありますかッ! それ本官ッ! |
成: |
”あのとき”から、ずいぶん時間が たっていますからね。 なにか、思い当たることが あるかもしれない、と思ったんです。 魔術師が消えた‥‥ その”カラクリ”について、ね。 |
原: | ‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥ |
成: |
(やっぱり、来たか‥‥ サイコ・ロック! ぼくが、ある事情で 手に入れた<<勾玉>>‥‥ コイツは、ヒトの心を閉ざして いる<<錠>>を見せてくれる。 錠を”解除”すれば、 閉ざされた心に秘められた‥‥ ”ヒミツ”を 知ることができる。 そう。すべては <<勾玉>>から始まり‥‥ そして、終わる‥‥!) |
成: |
‥‥それでは、原灰さん。 聞かせていただきましょうか。 あなたの”ヒミツ”を‥‥ |
原: |
‥‥な。な。な。‥‥く。く。く。 なんですかッ! この空気はッ! |
成: |
あなたは、何か。 心当たりがあるんですね? 或真敷 ザックさんが‥‥ ”どうやって消えたか?” |
原: |
い。い。イエッ。本官その。 そんなコトはマッタクこれ本官ッ! |
成: |
それならば、なぜ。 そんなに動揺してるんですか? |
原: |
それは本官、その。あのとき、 この場所で、あの。それは‥‥ とにかくッ! あり得ないのでありますッ! あんな小さな子に、 ナニができるのでありますかッ! |
成: |
‥‥なんですって? 今、なんて言いました? |
原: |
‥‥えッ! 本官。ナニか言ったでありますか! |
成: |
メガホンで叫んでおいて、 ”ナニか”もないでしょう。 ‥‥この部屋。 ”誰か”いたんですね? |
原: |
本官‥‥それについては、その。 ”もこひけん”を使うというコトに。 |
成: |
(黙秘するまでもない。 ザックさんの”共犯者”‥‥) あの日、この部屋にいた”人物” ‥‥ぼくには、わかっています。 |
原: |
コレ本官コレ本官コレ本官コレ本官 ンンンンンンンンンンンンンンッ! 見たコトありませんであります。 |
成: |
‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥ いやいや。ムリがあるでしょう、 さすがにそれは。 |
原: |
‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥ ‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥ ‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥本官ッ! |
原: |
あの日、本官。 見たであります‥‥その女の子を。 しかしッ! |
成: | な。なんですか? |
原: |
さすがに、その。‥‥見まちがえる のは、不可能であります。 小さなその女の子と、 身の丈2メートルもある魔術師を! |
成: |
(そんなにデカかったっけ。 ザックさん‥‥) たしかに‥‥ 小さい女の子と或真敷 ザックを 見まちがえることはないでしょう。 もし。見まちがえるとしたら‥‥ そこには何か”カラクリ”が あったはずです。 ‥‥どうやら、あなたには 心当たりがあるようですね。 この女の子が使った ”カラクリ”に‥‥! |
原: |
そ。そ。そ。そ。そ。そ。そ。そ。 そ。そ。そ。そ。そ。そ。そ。そ。 そ。そ。そ。そ。そ。そ。そ。そ。 そ。そ。そ。そ。そ。そ。それは? |
成: |
<<ぼうしクン>>です。 あの少女の”得意芸”で‥‥ この近くの<<ビビルバー>> という店で見られます。 |
原: | ‥‥‥‥‥‥‥‥ |
成: | <<ビビルバー>>へ行ったことは? |
原: |
‥‥‥‥‥‥‥‥ やっぱり。 アレは、ユメじゃなかったので ありましたのでありますね? |
成: | な。なんですか‥‥? |
原: |
あの夜。ステージで見たのは、 マボロシなんかじゃなかった‥‥ <<ぼうしクン>>は‥‥ <<ぼうしクン>>は、 ホントにいたのでありますねッ! |
原: |
今でも、なんとなく よくおぼえているであります。 或真敷 ザックが 法廷から逃げ出して‥‥ 本官は、それをツイセキ、カドの 部屋に追い詰めたであります! |
原: |
『或真敷 ザック! 本官から逃げられると思うなッ! 床にハラバイになり、 手をアタマの上に置きなさいいッ! ‥‥‥‥‥‥‥‥‥あ、アレ?』 |
み: | 『どうしたの? おじちゃん。』 |
原: |
『あ‥‥イヤ。その。 本官。その。”ハンニン”を ツイセキ中なのであります! 或真敷 ザック‥‥ 見たコトあるでありますか?』 |
み: |
『うん! みぬき、大好き! 大魔術、スゴいよねー! みぬき、大ファンなんだよ!』 |
原: |
『ナルホド‥‥それで、そんな カッコをしてるのでありますね。 とにかくッ! そのザックさん。 この部屋に来たハズでありますッ!』 |
み: |
『えー。でも、ここにはずっと、 みぬきしかいなかったけどなあ。』 |
原: |
『そ。そんなバカなッ! ソファの下は! ゴミ箱の中は! 絵のウラは! ジュータンの下は!』 |
成: |
やっぱり‥‥みぬきちゃんが ”共犯者”だったんですね。 |
原: |
‥‥信じられなかったであります。 あの事件から、1週間後。 なにげなく立ち寄った バーで、アレを見たのであります。 |
成: | <<ぼうしクン>>‥‥ですか。 |
原: |
自分の目が‥‥ 信じられなかったであります。 ”長い長いユメを見ているのだ” 今の今まで、そう思っていたのに。 |
成: | (それは長すぎるだろう) |
原: |
消えたのは<<魔術師>>じゃない。 <<ぼうしクン>>だったのですね‥‥ うううう‥‥‥ |
成: |
あの日、本当に起こったことは ‥‥シンプルだったんですね。 あなたがドアの前に立っていて、 そこへザックさんが、逃げてきた。 ‥‥しかし。それだけじゃ なかったんですね。 もうひとり、登場人物がいた。 そう‥‥第2控え室のドアの前に。 <<ぼうしクン>>といっしょに‥‥ |
原: |
そこが”ミソ”だったので ありますからしてねえ‥‥ |
成: |
‥‥さて。 あなたがまごまごしている間に ろうかを曲がった魔術師は‥‥ イチバン近いドアから、こっちの 部屋に逃げ込んだのでしょう。 ‥‥そして、原灰さん。 あなたが、ろうかのカドを 曲がった、その”瞬間”。 みぬきちゃんは、第2控え室に 逃げこんだ‥‥ ‥‥そして、ただ<<ぼうしクン>>を 引っこめるだけでよかったんです。 |
原: |
たしかに本官‥‥その。 ろうかを曲がったとき、 ほんの一瞬しか、見てなかった‥‥ 或真敷 ザックの、 あの赤いひらひらマントをッ! ‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥ ‥‥感激でありますッ! 本官の、ギモンとハンモンと ジモンとクモンの日々が、ついに! でろんでろんにトロけていく のが、見えるでありますッ! 道ばたに捨てられた アイスクリームのようにッ! 食べ散らかされて残された チョコレートパフェのようにッ! |
成: |
(イメージがビミョーに もの悲しいな‥‥) ‥‥申しわけありませんでした。 まさか、あの事件のせいで‥‥ あなたに、こんなメイワクを かけていたとは。 |
原: |
こ‥‥‥‥‥‥‥ 光栄でありますッ! ほ、本官ッ! その。 ヒトにあやまることは、数あれど。 あやまってもらったの、初体験で ありますからしてコレェェェッ! |
成: |
じつは、今。 ぼくが、あの子のホゴシャ なんですよ。だから‥‥ |
原: |
そう、だったのでありますか。 ‥‥‥‥‥‥‥‥ ‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥ 本官! ベツにコレ、 ウラんでなど、いませんからして! |
成: | え‥‥‥ |
原: |
被告人を取り逃がしたのは、 ジジツでありますから! コレもまた、警察官に復帰する ための、大いなるイッポであると! 本官の目標は、あのイノコリ刑事殿 でありますからしてェェェッ! |
成: |
‥‥ええと、原灰さん。 これ。<<ビビルバー>> マジックショーのタダ券です。 よかったら‥‥ |
原: |
こ‥‥‥‥‥‥‥ 光栄でありますッ! ほ、本官ッ! その。 モノを取られたことは、数あれど。 めぐんでもらったの、初体験で ありますからしてコレェェェッ! それではッ! 次こそは、 法廷でお会いしましょうッ! |
成: |
‥‥そうですね。 楽しみにしていますよ。 |
成: |
裁判所内の”謎の消失”に注目を 集めて、魔術師はその姿を消した。 その”謎”が、こうして姿を 消しても‥‥魔術師は現れなかった。 ぼくがふたたび魔術師に会ったのは、 それから7年後のことだった‥‥ |
ロシア料理店 ボルハチ | |
霧: |
‥‥さてと。それでは、そろそろ シツレイさせてもらいます。 シゴトが残っているのでね。 |
成: |
‥‥やれやれ。じゃあ、 ぼくもピアノに戻るとするか。 |
霧: |
正直なトコロ。 きみが休んでいるほうが‥‥ 店内のフンイキが なごやかな気がするのですがね。 ‥‥それでは、また。 |
成: |
(やれやれ‥‥ あと2時間、か‥‥ ダレか”お客さん”でも 来てくれないかな‥‥) |
?: |
‥‥シツレイ。 ちょっと、いいかい。 |
成: |
‥‥ああ、スミマセンね。 ピアノなら、これから弾きますよ。 リクエストには こたえられないけど。 |
?: |
私が用のあるのは、 ピアノ弾きじゃアないんだ。 そう‥‥カードを弾く ”プレイヤー”のほうでね。 |
成: |
ああ‥‥そっち、ですか。 ぼくもね。お客さんを 待っていたトコロなんですよ。 |
?: |
‥‥ウワサは本当だったか。 <<ホンモノのゲームが楽しみ たかったら、ボルハチへ行け>> |
成: |
‥‥ところで、そちらは? お連れさん、ですか? |
?: |
あ。ワタシ。なんというか、 ケチなニュース屋、ってゆう! |
?: |
‥‥ああ。 彼はゲームには参加しない。 用が済んだら、帰らせるのでね。 気にしないでくれ。 2人だけの、真剣勝負だ。 ‥‥よろしくたのむよ。 |
成: |
成歩堂芸能事務所、 ナンバー2のタレント‥‥ いちおう”ピアノ弾き”って コトになっている。 でも、そのウラに隠れた <<もうひとつのカオ>>‥‥ それが”ポーカーゲーム”の プレイヤーだ。 キッカケがなんだったかは 忘れてしまった‥‥しかし。 『あの店には、 最強のプレイヤーがいる。 ダレも勝ったことが ないみたいだ』 ウワサがウワサを呼んで‥‥ <<もうひとつのカオ>>を おがみに来る連中が増えた。 ここは、レストランだ。 カネが動くような ゲームなんか、していない。 ただ‥‥モノ好きな連中ってのは、 カネを持ってるってのが相場だ。 そうなれば、店のオヤジにとっても 悪くないハナシ、ってワケだ。 |
成: |
じゃあ‥‥勝負、といきましょうか。 そのための部屋がありますから。 |
?: |
<<ナラズモの間>>かい。 ‥‥ちょっと、その前に。いいかな。 |
成: | ‥‥なんですか? |
?: |
自己紹介をしておこう。 私の名は‥‥浦伏 影郎。 |
葉: |
あ。ちなみに。ワタシ、ハミガキと 申しますニュース屋で! |
成: | ああ、ぼくは‥‥ |
?: |
おい。シツレイじゃないか? ‥‥成歩堂 龍一くん。 |
成: | え‥‥? |
?: |
自己紹介ってのは、 相手の目を見てするモンだ。 ‥‥私がダレだか、 わからないのかね? |
成: |
どこかで、お会いしたことが‥‥ (‥‥あっ!) |
ザ: |
『今日。この場で‥‥ キミたちは、この私に <<有罪判決>>を下すコトはできない』 |
裁: | 『ど。どういうことですかな?』 |
ザ: |
『そいつは‥‥‥‥‥‥ こういうことさ!』 |
成: | 『な‥‥奈々伏さんッ!』 |
牙: |
『被告人が逃げたッ! 追うんだ! 早くッ!』 |
裁: |
『係官! すべての出入り口を 封鎖するのですッ!』 |
裁: |
『大至急! ゼッタイに 逃がしてはなりませんッ!』 |
成: |
ま‥‥まさか‥‥そんな! あ。あなたは‥‥ 或真敷 ザック‥‥! |
ザ: |
‥‥本当に、ザンネンなコトだよ、 成歩堂くん。 この、世紀の<<蘇生>>大魔術の 観客が、たったひとり。 きみだけ、なんてねえ‥‥ |
成: |
(ワルい夢を見ている気分だ‥‥ 或真敷 ザック! あるイミ、ぼくの人生を 大きく狂わせたオトコ‥‥) |
ザ: | おい、そこのキミ! |
雅: | ‥‥は。はい。 |
ザ: |
これから、ゲームを始めたい。 準備してくれないかね。 |
雅: |
で。では‥‥<<ナラズモの間>>を ご用意いたしますね。 |
成: |
本当に‥‥あの。 或真敷 ザックさん‥‥ですか? |
ザ: |
今は<<浦伏 影郎>>だ。 そっちでたのむよ。 |
成: |
‥‥あれから何年たちますか。 6年、かな。 |
ザ: |
あと3日で、 まるまる7年になる。 ‥‥キミには メイワクをかけたな。 |
成: | ああ‥‥そうですね。 |
ザ: |
その‥‥元気かな? ええと。みぬきは。 |
成: |
元気ですよ。 モウシワケないですけど、 もう働いてもらってます。 |
ザ: |
感謝しているんだ。 言うまでもないがね。 ‥‥だから。 もう一度だけ、会いに来た。 カードの決着もつけたいし、な。 |
成: |
ポーカー、ですか? (この”目”‥‥本気だぞ‥‥) |
ザ: |
私は、”負ける”のが 何よりもキライなのだよ。 どんな手を使ってでも、 キミには”勝って”おきたいのだ。 |
成: |
(やれやれ‥‥ ”勝負”への、異常なこだわり。 キケンなオトコだ‥‥コイツは) |
ザ: |
‥‥どうやら。 勝負に入る前に、 つもる話がありそうだな。 |
成: | ‥‥おたがいに、ね。 |
成: |
7年前の、あの日も‥‥ 勝負しましたね。 |
ザ: |
ああ。‥‥キミも さぞかし、おどろいただろう。 ‥‥いきなり、留置所に 呼び出されて‥‥ |
‥‥‥2枚。 | |
‥‥‥1枚。 | |
‥‥‥ショーダウンだ。 負けた‥‥か。この私が。 | |
たかが、ポーカーですよ。 | |
長い間このゲームをしているが‥‥ 私が負けたのは、これで2人目だ。 | |
‥‥1人目は? | |
‥‥私が”殺した”男だよ。 もちろん、ね‥‥ | |
成: |
‥‥ポーカーで弁護士を 雇うんですね、あなたは。 |
ザ: |
雇うこともあれば、クビにも するコトだってあるさ。 真剣勝負の場では、その人間の ”本性”が見える。 言ってるイミはわかるだろう? ‥‥キミならば、な。 |
成: |
‥‥みぬきちゃんの ”チカラ”ですか‥‥ |
ザ: | あの子は”別格”だ。 |
成: |
(この7年‥‥ ぼくは、この<<ボルハチ>>で 負けを知らない。 それは、 大勝負のときはいつも‥‥ あの子がいて、”サイン”を 送ってくれるからだ) |
み: |
『‥‥パパ。あの人、 強い手が入ってるよ。』 『‥‥今なら、行けるカモ。 早いうちに勝負したほうがいいよ。』 |
成: |
あの”チカラ”‥‥ いったい、なんですか? |
ザ: |
ヒトの反応から、考えを”読む” のは、大魔術のキホンだ。 しかし。みぬきたちの”それ”は、 アキラカに別のモノだ。 |
成: | ‥‥どういうことですか? |
ザ: |
前に話しただろう。 私が”負けた”相手のコトだ。 |
成: | 或真敷 天斎‥‥ |
ザ: |
あのとき、私も知った。 キミの言う”チカラ”をね。 |
成: |
あなたの口調では‥‥ ”血筋”に、そんなチカラが あるように聞こえますね。 ‥‥”或真敷”の。 |
ザ: | ”血筋”‥‥‥ |
ザ: |
悪いが‥‥そいつは、 事件とはカンケイない。 今のキミには、必要のない情報さ。 |
成: |
(‥‥”或真敷の秘密”って ワケか‥‥) |
ザ: |
あれも、今年で 15才になるのかな。 |
成: |
あいかわらず、あなたを 目指してがんばってますよ。 |
ザ: |
そう、か‥‥ 姿を消すことを考えたとき。 あの子だけが気がかりだった。 |
成: |
じゃあ‥‥最初から ”消える”つもりだったんですか? |
ザ: |
キミには、すまないコトをした。 しかし‥‥ あの日、有罪になるワケには いかなかったのだ。 コイツがあったから、な。 |
成: | これは‥‥? |
ザ: |
<<権利譲渡書類>>‥‥ そこに、サインがあるだろう? |
成: |
ケンリ‥‥ジョウト‥‥? これは<<或真敷 天斎>>の サインですね。 『私の所有する大魔術の仕組み・ 演出・上演権のすべてを‥‥ 以下の者にゆずるものとする』 受取人の名前は‥‥ <<或真敷 ザック>> |
ザ: | まあ‥‥私、ということだな。 |
成: | このページ。もしかして‥‥ |
ザ: |
そうだ。あの<<手記>>を おぼえているだろう? |
成: |
『この手記を、よく見てください。 ‥‥アキラカに、ページを 破り取られた跡があります。 ‥‥そして、ここに。 その”破り取られた”と思われる 1ページがあります。』 |
裁: |
『ちょ。ちょっと! それ、見せてください!』 |
成: |
‥‥忘れるはず、ないでしょう。 あの紙キレのおかげで、 ぼくはバッジを失ったんですからね。 |
ザ: |
ここにあるのが、その破られた ページの”ホンモノ”だ。 あの晩。私が天斎から受け取った。 |
成: |
‥‥できれば、7年前に 教えてもらいたかったですね。 |
ザ: |
‥‥モウシワケなかった。 あのときは‥‥法廷から姿を消す だけで手いっぱいだったのだ。 |