王泥喜 法介…紺 | |
成歩堂 龍一…黒 | |
成歩堂 みぬき…赤 | |
裁判長…緑 | |
牙琉検事…茶 | |
宝月 茜…桃 | |
絵瀬 まこと…黄緑 | |
絵瀬 土武六…灰 | |
或真敷 バラン…薄橙 | |
葉見垣 正太郎…橙 | |
或真敷 ザック…青 | |
糸鋸 圭介…黄土 | |
原灰…黄 | |
ラミロア…藤 | |
牙琉 霧人…紫 |
留置所 面会室 | |
バ: |
これはこれは‥‥ フシギな光景ですな。 |
成: | なにが、ですか? |
バ: |
この、ガラスの壁をへだてた 向こうとこちら‥‥ そもそも”逆”であるべきでは ないでしょうかなッ! 証拠をねつ造したあなたが 自由の身で‥‥ 無実の私が、こうして、 とらわれの身とは。 |
成: |
ぼくが”ねつ造”したという 証拠はありませんよ。 |
バ: |
私が、師匠のイノチを奪ったという 証拠もないようですがね。 |
成: | ‥‥‥‥‥‥‥‥ |
バ: |
まあ‥‥やがて私は、 自由の身になるでしょう。 大きなステージが、 私を待っている。 その一方で‥‥あなたを 待っているのは、なんですかな? |
成: |
(場末のレストランの、 小さなピアノ‥‥かな) |
バ: |
まあ、いいでしょう。 タイクツしていたところです。 ハナシを聞いてあげましょうか。 |
成: |
(或真敷 天斎をめぐる ”射殺事件”‥‥ 撃ったのは、兄弟子ザックか、 このバランか‥‥ 決着の前に、”兄弟子”は 消失してしまった。 その”謎”の手がかりが、 ここで見つかるのか‥‥?) |
バ: |
さすが、兄弟子・ザック‥‥ といったところでしょうか。 あの場面で”消失”とは。 |
成: |
おかげで、ぼくの弁護士バッジも 消えてしまいましたけどね。 |
バ: |
栄光の影では、ダレかが 泣くものなのですよ。それに‥‥ 彼の”消失”は、あるひとつの <<ジジツ>>を示しています。 |
成: | ‥‥なんですか? |
バ: |
<<或真敷 天斎を殺害したのは、 或真敷 ザックである>>‥‥ 彼は、それを認めたのです。 |
成: |
(たしかに‥‥世論も、 そんな感じだったな) |
バ: |
‥‥とにかく。 私自身の拘留期限も近い。そろそろ、 帰りじたくを始めないとね。 |
成: |
‥‥さっそく、ステージに 立つつもりですか? |
バ: |
観客が待っているかぎり、バランは どこへでも現れる。それに‥‥ |
成: | なんですか? |
バ: |
兄弟子の消えた、今。 天斎の術はすべて‥‥ 不肖この私、或真敷 バランの ものになるのですからな。 |
成: | (それは‥‥どうだろう‥‥?) |
バ: |
まあ、そういうイミでは あの法廷は‥‥ バランにとっては、この上ない 宣伝になったと言えましょう。 |
成: |
あなたの容疑も、キレイに 晴れたワケではありません。 ‥‥なんといっても。 あなたにも、あの”手紙”が 届いたワケですから。 或真敷 天斎から、あなたに 宛てられた”脅迫状”‥‥ |
バ: |
‥‥さよう。或真敷 ザックは、 この”命令”に従ったワケですな。 ‥‥やめましょう。 ”どっちが撃ったか‥‥?” 兄弟子が消えた以上、 水かけ論にすらなりません。 |
成: | ぼくが聞きたいのは、他のコトです。 |
バ: | なんでしょうかな‥‥? |
成: |
カンタンなコトですよ。 脅迫の”タネ”は、 いったい、なんだったのか? |
バ: |
‥‥脅迫の”タネ”‥‥ はっはっはっはっ‥‥! ご存じなかったかな? |
成: | なんですか? |
バ: |
大魔術師は、タネ明かしなどしない、 ということです。 |
成: |
(‥‥そりゃ、すんなり教えて くれるわけ、ないよな‥‥) |
バ: |
観客は、ステージに 上がることはできない。 客席から、スポットライトを ながめておればよいのです。 |
成: |
(今回は、ほとんどスイソクする ことしかできない‥‥ 事実関係‥‥そして、証拠品から 導き出される”道”を‥‥ できるだけ、たどってみよう!) ”自分のイノチを奪え” 余命が短かったとはいえ‥‥ これは<<殺人>>の 強要に他なりません。 |
バ: |
ムチャなコトを考えるヒトだった。 ‥‥我が師匠は。 |
成: |
‥‥そして。 ジッサイ、イノチは奪われた。 <<殺人>>の理由になるような ”弱み”‥‥それはやはり。 ”イノチ”に関わるような コトだったのではないでしょうか。 |
バ: | ‥‥どういうことですかな? |
成: |
あなたがたは、大がかりな ショーの世界に生きている。 当然”キケン”がつきまとって いた、と考えられますが‥‥? |
バ: |
‥‥おたがい、 手間は省きたいもの。 ワレワレのショーの”キケン”‥‥ 具体的な証拠を見せていただきたい。 |
バ: |
‥‥‥! これは、ワレワレの‥‥ |
成: |
トクベツにデザインされている そうですが‥‥このとおり。 実弾を1発、装填して‥‥ 撃つことができる。 |
バ: |
‥‥バカなッ! ワレワレは魔術師であって、 殺人鬼などではないッ! |
成: |
いやいや。そんなコトは 言ってません。ただ‥‥ いつだって、可能性はあった はずです。 ‥‥”事故”のね。 |
バ: |
<<ザックとバランの早撃ちショー>> ‥‥かなりムカシ、 封印した演目だ。 |
成: |
‥‥封印の理由は‥‥ ”キケンだったから”ですか? |
バ: |
‥‥そのとおり。 他にいったい、どんな理由が? |
成: |
カンタンなコトですよ。 ”すでに事故が起こったから”‥‥ |
バ: |
‥‥‥ッ! さすがは ”ねつ造”の魔術使い、ですな。 しかし。そんなピストル1挺で、 何が証明できるというのですかな? |
成: |
ステージ上で、あなたがたの いずれかの弾丸が‥‥ もし。誰かのイノチを 奪ってしまったとしたら? |
バ: |
大魔術師に”もし”などという 呪文は存在しない‥‥ たとえば‥‥そう。 ワレワレがいったい、だれを 撃ったというのですかッ! |
成: |
(どうやら‥‥正しい道を 進んでいるみたいだな‥‥ あとは、コイツをスナオに たどればいい‥‥) ”事故”のギセイになった人物‥‥ それを示す、証拠品があります! |
バ: | そ、それは‥‥ |
成: |
或真敷 ザックの奥さん‥‥ みぬきちゃんのおかあさんですよ。 ‥‥優海さん、 というみたいですね。 |
バ: |
あ‥‥‥ あるまじきィィィィッ! |
バ: |
し。しかし! いったい、なぜッ! 彼女が、ワレワレの弾丸に当たった などと断言できるのかな‥‥? |
成: |
(やれやれ‥‥ まだ、認めないつもりか) ユーミさんは、ダレよりも弾丸に 当たるキケンが高かったのです。 ”撃たれる危険性”は、 コイツを見ればアキラカです! |
成: |
<<或真敷一座>>‥‥ものすごい 人気だったみたいですね。 その絶頂期には、 記念切手まで発行された、とか。 |
バ: |
‥‥まあ、ワレワレは、ステージに ”時代”を刻んだといえるだろう。 |
成: |
‥‥その記念切手に 写っているんですよ。 ‥‥これは、優海さんですね。 |
バ: | ぐ‥‥ッ! |
成: |
みぬきちゃんの母親は、 ”行方不明”だそうです。 ‥‥いったい、彼女は どうなったんですか? |
バ: | わ‥‥私は‥‥私は、知らないッ! |
成: | (まだ、ロックが残っている‥‥) |
バ: |
‥‥ひとつ、見落としていることが あるようだ。 |
成: | ‥‥なんですか? |
バ: |
‥‥たしかに。 <<一座>>は閉鎖された世界だ。 座長・天斎が”その気”になれば、 隠すことは可能だったかもしれない。 ‥‥しかし。 そんなコトをすれば、”隠した” 天斎自身も”共犯者”になるッ! ‥‥つまり。脅迫の”タネ”に 使うことは、不可能なのですよ。 |
成: |
‥‥‥‥‥‥‥‥ (或真敷 バランの主張には、 一理ある‥‥ 一座の人間が事故死したとして、 それを隠した場合‥‥ 天斎自身も”罪”に 問われてしまうだろう‥‥) |
バ: |
‥‥どうやら わかってくれたようですね? |
成: |
(あと、一押しだ! 何か、ないのか‥‥? 優海さんが死んだこと”自体”が、 師弟関係に及ぼすチカラ‥‥) |
バ: |
その目‥‥まだ、 何か言いたげ、かな。 これ以上、いったい どう立証してくれるのかな? |
成: |
‥‥優海さんの事故が、あなた方の ”絶対的”な弱みになった理由‥‥ |
成: |
(‥‥ここは、<<人物ファイル>>の 情報で立証してみよう‥‥!) ザックさんの奥さんの”事故死”。 そのコト自体が‥‥ 天斎氏に対して、絶対的”弱み”に なる理由を示す情報とは‥‥ |
成: |
亡くなった”優海”さんが モンダイだった‥‥そうですね? |
バ: | ど。どういうことかな? |
成: |
彼女は、或真敷 ザックの妻であり、 みぬきちゃんの母親であり、そして。 或真敷 天斎の ひとりむすめだったのです! |
バ: | ぐ‥‥‥ッ! |
成: |
あなたがたは、 ステージの上で‥‥ 師匠の大切なひとりむすめを 事故で死なせてしまった‥‥ これ以上、決定的な”弱み”は ないと思いますがね! |
バ: |
う‥‥‥‥‥‥ あ。あれは‥‥ あるまじき事故だったのだッ! |
バ: |
‥‥証拠なんて、 なにひとつない‥‥ないのだ! |
成: |
しかし。優海さんは ”行方不明”になって‥‥ あなたがたふたりは、 師匠から”脅迫”を受けていた。 調べれば、わかることだと 思いますけどね。 |
バ: |
‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥ 私たちは、フクザツな カンケイだったのですよ‥‥ |
成: | <<或真敷一座>>ですか‥‥? |
バ: |
天才大魔術師・或真敷 天斎と、 そのひとりむすめ。 そして、ふたりの弟子‥‥ |
成: |
なんというか。最初から、 何か起こりそうな布陣ですね。 |
バ: |
誤解してもらっては困る。 たしかに、事故は起こった‥‥ しかし。 あれは、本当に事故だったのだ。 あれは<<ザックとバラン>>の 得意芸だった‥‥ アシスタント‥‥ユーミの カラダを素通りして‥‥ いろいろなものを撃ち砕く! スピードとスリルに満ちた芸だった。 ある日。その芸に、新しい要素を 加えるためのリハーサルで‥‥ あの悲劇は起きた。 どっちの弾丸が、 彼女のイノチを奪ったのか‥‥ それは、今でもわからない。 ユーミはこの世から消えて、 ザックは妻を失った。 みぬきは母を失い、そして‥‥ 天斎は、ひとりむすめを失った。 |
成: |
それが‥‥ ”脅迫”につながったんですね。 |
バ: |
<<或真敷一座>>の”影”の 部分‥‥というワケですな。 |
成: |
‥‥なぜ、或真敷 天斎は ”事故”を隠そうとしたんですか? ひとりむすめの”死”を‥‥ |
バ: |
或真敷一座にとって、大切な 時期だった‥‥そうとしか言えない。 <<天斎>>から <<ザックとバラン>>へ‥‥ 世代交代を成功させるため、 ワレワレはすべてギセイにしていた。 ユーミの死も、そのひとつだ。 しかし‥‥やはり。 彼女のイノチは消えても、 彼女の”存在”は消えなかった。 |
成: | どういうことですか? |
バ: |
いつしかワレワレ‥‥兄弟子と私は、 天斎に逆らえなくなっていった。 天斎の下で、天斎のために芸を することを強いられつづけたのです。 |
成: |
なるほど‥‥でも。 しかたないかもしれませんね。 ひとりむすめ、だったワケですから。 |
バ: |
しかし! それはヒキョウと いうものではないかッ! |
成: | え‥‥‥ |
バ: |
父親である彼が、 彼自身の決断で”隠した”ジジツだ。 それなのに‥‥ ヒトの弱みにつけこむとは‥‥ッ! |
成: |
(やはり‥‥フツウの関係では なかったんだ‥‥) このコト、みぬきちゃんは‥‥? |
バ: |
知らせていない。 ‥‥当然だろう。 母親のイノチを奪ったのが、 自分の父親かもしれぬ、など。 |
成: | そう、ですね‥‥ |
バ: |
‥‥あの事故‥‥ 今さら、思い出すことになるとは。 |
成: |
すみませんでした。でも、 いろいろなコトがわかりましたよ。 |
バ: |
<<天斎を撃った人間>>を 示す証拠には、ならないがね。 |
成: | ‥‥そうですね。 |
バ: | そういえば‥‥ |
成: | ‥‥? |
バ: |
あの、事故のあと。 かなりしつこく、ワレワレを 嗅ぎ回っていたヤツがいたな。 |
成: | それは‥‥記者、ですか‥‥? |
バ: |
”ニュース屋”とか言っていたな。 <<取材>>と称して、 一座をウロウロしていたよ。 |
成: | そのヒトの名前はわかりますか? |
バ: |
なんといったかな‥‥ 忘れてしまったよ。 取材を通じて、兄弟子・ザックと 仲よくなったようでね。 私は気に入らなかった。 |
成: | そうですか‥‥ |
バ: |
名前は思い出せないが‥‥たしか。 キツいミントのニオイがしたよ。 ‥‥ニカッと笑うと、ね。 |
成: |
わかりました。 いろいろありがとうございます。 |
バ: |
‥‥過去に干渉するものじゃない。 わかっただろう? なんのモンダイも解決しない。 他人のキズをえぐるだけだ。 |
成: | ‥‥申しわけありませんでした。 |
成: |
或真敷一座のあいだには、 深い”闇”が横たわっていた。 その”闇”から、みぬきを守る‥‥ それが、ぼくの 役目であるように思えた。 あのとき浮かんだ人物‥‥ <<ニュース屋>>の正体は、当時。 ケッキョク、わからずじまいだった。 ‥‥しかし。”今”のぼくには、 心当たりがある。 ミントのニオイのきつい、 あの”笑顔”‥‥ 或真敷 ザックと”世間”をつなぐ、 最後の”糸”‥‥ ‥‥いずれ、そいつを たどってみることにしよう。 |
どぶろくスタジオ | |
葉: |
オヤ。これは。 これはこれは。これはこれはこれは。 |
成: | ぼくのこと、おぼえていますか? |
葉: |
モチロンです! あの夜、 ボルハチでお会いした、ってゆう。 |
成: |
何してるんですか? こんなところで。 主人の土武六氏は毒殺されて、 むすめさんも、もう‥‥ |
葉: |
ええ。わかっています。 わかっていますよ、ええ。ええ。 なんというか。 ”クヤシイ”と言いますか。 ”もう少し早く、ここに たどりついていれば”ってゆう。 |
成: |
ずっと、追っていたんですか? ‥‥この事件。 |
葉: |
なんといっても、トモダチですから。 ‥‥或真敷 ザック氏は。 |
成: |
ああ。ボルハチで、 ザック氏もそう言ってましたね。 |
葉: |
キモチのイイ男でしたよ。 ちょっと‥‥いや。かなり‥‥いや。 すこぶる、アラっぽいオトコでした。 |
成: |
‥‥少し、お話を 聞かせていただけますか。 |
葉: |
あ、いいですか、ワタシ。ワタシ、 インタビューする側なんですよ。 わかります? 聞くほうであって、 聞かれるほうではない、ってゆう。 |
成: | ‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥ |
葉: |
ま。ま。いいでしょ。 最近は、聞かれるコトにも 慣れてきたことだし。 |
成: |
絵瀬 土武六氏と、まことさん‥‥ オキノドクでしたね。 |
葉: |
”贋作”は、犯罪行為です。 それは、責められるべきでしょう。 しかし。彼らの運命を決定的に 狂わせたのは‥‥おわかりですね? |
成: |
‥‥ええ。 手記の偽造‥‥ですね。 |
葉: |
‥‥あの晩。ワタシ。 土武六氏に”取材”をして、 わかったコトがあります。 |
成: | ‥‥なんですか? |
葉: |
土武六氏はいつも、 ”誰かに見張られていた”そうです。 7年間、ずっと。”カベの左目、 ドアーの右目”‥‥ってゆう。 |
成: |
”見張られていた”‥‥ <<罪>>のイシキがあったワケですね。 |
葉: |
いいや。決して”気のせい” というワケじゃなかったのですよ。 |
成: | ‥‥‥? |
葉: |
‥‥じつはね。 このワタシも感じてたんですよ! ‥‥この事件を 追っているあいだ、ずっと! ”あれワタシ、見張られてるの?” ‥‥ってゆう。 |
成: |
それは、やっぱり。 <<罪>>のイシキがあったワケですか。 |
葉: | なんでワタシがツミなんですかッ! |
成: |
(”見張られていた”‥‥ たしかに、気になるな‥‥) |
成: |
絵瀬 土武六さんが ”見張られていた”‥‥ ‥‥そして、あなたも。 気のせいではないんですか? |
葉: |
”気のせい”とか ”モリのせい”とか‥‥ そういうメルヘンティックな ハナシではないのです! この私自身も! 見張られていた、ってゆう。 ‥‥だからこそ。 <<或真敷 ザック>>は‥‥ 7年たって、私に接触したトタン。 消されたのではないでしょうかッ! |
成: | ‥‥‥! |
葉: |
法廷より”消失”してから 7年間‥‥ 彼は、ダレとも 連絡を取りませんでした。 そして‥‥”残り時間”が ギリギリになってから‥‥ この書類を作るため、 ワタシに連絡してきたのです。 |
成: | そして‥‥彼は、死んだ。 |
葉: |
これが、どういうことか‥‥ おわかりでしょうッ! |
成: |
”見張られていた” というワケですか‥‥ |
葉: |
もしかしたら‥‥ ”あなた自身”もね! |
成: | (ぼ‥‥ぼく自身‥‥?) |
葉: |
彼と知り合ったのは、そう。 あの事件がキッカケでしたね。 |
成: |
<<或真敷 天斎射殺事件>> ‥‥ですか。 |
葉: |
いや。その前の‥‥ 世間には、知られていませんがね。 |
成: |
もしかして‥‥”事故”ですか? <<早撃ちショー>>の。 |
葉: |
‥‥コレは! よく、ご存じだ! 当時のワタシときたら。 デカいスクープを掘り当てて。 富と名声と美女と子犬をゼンブ ヒトリジメしようとしていた‥‥ ミントのニオイのキツい、 青二才でしたからね。 |
成: |
或真敷 バラン氏が言ってました。 ”しつこい記者がいた”って。 |
葉: |
じつは、ワタシ。 或真敷 天斎と親交がありまして。 当然、むすめさんも知ってた ワケですな。優海さん、でしたか。 |
成: | そうだったんですか‥‥ |
葉: |
その優海さんが、突然、 いなくなった。 そして、天斎氏も、そのことに ついて、何も教えてくれない。 いやー、悪いクセが カオを出しちまいましてね。 ”事件のニオイをオカズに ゴハン3バイ行ける”ってゆう。 それで、優海さんのダンナに 直撃インタビューを。 |
成: | 或真敷 ザック‥‥ですか。 |
葉: |
当時、或真敷一座には、 フシギな空気がただよっていました。 師匠と弟子のイビツな関係は、 すでに始まってたんでしょうなあ。 やっぱり‥‥ 優海さんが関係してるんでしょ? ね。ホラ。どーなんだそのへん! |
成: | ‥‥さあ、ぼくにはなんとも。 |
葉: |
‥‥とにかく。 取材をつづけるうち、 ザック氏と仲よくなりまして。 ま。つきあいの中で、5発ほど パンチをカッ食らいましたが。 何かと相談を受けるように なったワケです。 |
葉: |
この7年間‥‥ ずっと待っていたようですね。 |
成: | 待っていた‥‥? |
葉: |
もちろん、 ステージへのカムバックです! ”天斎の芸を復活させる”‥‥ ま。かなわぬユメでしたが。 |
成: |
この書類‥‥ <<上演権>>のせいですね。 |
葉: |
正式な書類が提出されない かぎりは‥‥ 或真敷 ザック・バランの両者に <<譲渡>>の可能性がありました。 |
成: |
‥‥だから、バランさんは、待った。 ザック氏が、法律的に”死ぬ”まで。 |
葉: |
待ちに待った”時”がきて。 バラン氏、すっかりその気ですよ。 |
成: |
ステージの準備を進めてますね。 <<県立国際ひのまるコロシアム>>で。 |
葉: |
まあ、その書類が提出されれば‥‥ ステージはいきなり中止、 というコトになるでしょうけどね。 なんというか。気の毒な男ですね。 或真敷 バランは。 相続争いにやぶれ‥‥ そして、恋にも破れた。 |
成: | ”恋”にも‥‥? |
葉: |
‥‥想像がつくでしょ? ふたりの”弟子”と、 師匠の”ひとりむすめ”‥‥ これをめぐった三角関係、 というヤツです。 |
成: |
ううん‥‥ わかりやすいですね。 |
葉: |
”一座”というのは、 閉ざされた世界ですからね。 家族同様のつきあいと‥‥ それ以上にドロドロした感情が ウズまいているようですな。 |
成: |
”優海”さんは‥‥そんな中で みぬきを生んで‥‥ そして、 亡くなったわけですか。 (もう少し、詳しく聞いてみた ほうがいいな‥‥彼女のこと) |