王泥喜 法介…紺 | |
成歩堂 龍一…黒 | |
成歩堂 みぬき…赤 | |
裁判長…緑 | |
牙琉検事…茶 | |
宝月 茜…桃 | |
絵瀬 まこと…黄緑 | |
絵瀬 土武六…灰 | |
或真敷 バラン…薄橙 | |
葉見垣 正太郎…橙 | |
或真敷 ザック…青 | |
糸鋸 圭介…黄土 | |
原灰…黄 | |
ラミロア…藤 | |
牙琉 霧人…紫 |
ひのまるコロシアム | |
バ: |
‥‥これはこれは。 なつかしいカオですな。 |
成: | おひさしぶりです。 |
バ: |
あれから7年、ですか‥‥ 正直なところ。二度と会うことは ないと思っておりましたよ。 |
成: |
うかがいたいことがあって、 やってきました。 |
バ: |
‥‥取材はじゅうぶん受けました。 もう、話すことはありませんな。 |
成: |
ぼくも、いろいろなハナシを 聞いてきました。 ただ‥‥最後に、もう一度だけ。 あなたと会っておかなければ ならない‥‥そう思ったんです。 |
バ: | ‥‥‥‥‥‥‥‥ |
バ: |
この7年間。決して、 ラクな道ではなかった‥‥ |
成: |
天斎氏の演目を 上演できなかったから、ですか? |
バ: |
見そこなわないでいただきたい。 バランの技は”ホンモノ”。 師匠の助けなど。 むしろ。我が道をジャマしたのは、 兄弟子でしたな。 |
成: | 或真敷 ザック‥‥ |
バ: |
‥‥7年前。 法廷での、あのミゴトな消失。 あれで、すべてが解決した‥‥ そう思ったのですが。 |
成: |
<<或真敷 ザックが師匠を殺害、 その罪から逃れるために消えた>> ‥‥7年前。あなた自身、 そう言ってましたね。 |
バ: |
‥‥ついさっきのコトのように おぼえていますよ。 しかし。ザンネンながら、 そのようには行かなかった。 このバラン自身の”疑惑”が 消えなかった! 兄弟子・ザックが、 この私をかばって消えた‥‥ そんなコトを書くマスコミもあった。 ‥‥信じられますか! |
成: | そうだったんですか‥‥ |
バ: |
‥‥しかも。 その同じマスコミが‥‥ 今度はこの、史上最大のショーを おもしろ半分に取材に来る。 そして私は、それにニコニコと 答えなければならない。 これを茶番と呼ばずして、 なんでしょうかッ! |
成: |
でも‥‥それは。あなたたちが ハッキリさせなかったからです。 天斎氏の”死”を。 ぼくは今日、今度こそ、 そのコタエを知るために来たのです。 |
バ: | ‥‥‥‥‥‥‥‥ |
成: | (‥‥まあ、そうだろうな) |
バ: |
観客は、ステージに 上がることはできない。 客席から、スポットライトを ながめておればよいのです。 |
成: |
(やれやれ。そのセリフ‥‥ 7年前にも聞いた気がするぞ) |
バ: |
‥‥今さら、 何を聞こうがムダですな。 |
成: |
ぼくは、この事件に 関わってしまった。 すべてを知らなければ ならないんです。 |
バ: |
この7年間。私は耐えてきた。 今こそ! 遅ればせながら、 私の時代が幕を開けるのです! 我が一座が生み出した奇跡の数々は、 今。この私のモノになるのだ! |
成: |
(バランさんには悪いけど‥‥ とにかく、今は ”コタエ”が必要だ。 最も破壊力のあるバクダンで、 まず、ダマらせてしまおう) バランさん。 コイツがあるかぎり‥‥ あなたが”奇跡”を上演するのは ムズカシイかもしれません。 |
バ: |
なんですかな? それは。 ‥‥我が一座のマークが 入っているようですが‥‥ |
成: |
もっと早く、持ってくるべき だったようです。 こんなに早く<<復活>>のジュンビを しているとは知らなかったもので。 |
バ: |
‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥ これは‥‥? |
成: |
天斎氏の<<奇跡>>の上演権利‥‥ その権利者を示す書類です。 |
バ: |
ば、バカなッ! 或真敷‥‥ザック‥‥だと‥‥ しかも、なんだ! 我がムスメにゆずる、だと‥‥ |
成: |
奈々伏 みぬき‥‥今は、ぼくの ムスメということになっていますが。 |
バ: |
あり得ぬッ! あのオトコは‥‥ ザックは、消えたハズではないか! |
成: |
この書類は、ホンモノです。 ‥‥ザック氏は、生きていた。 公証人と、ぼくが証言します。 |
バ: |
ぐ‥‥‥‥‥‥‥‥‥ おおおおおおおおおおおおおッ! |
バ: |
ど、どうして‥‥なぜだッ! なぜ、運命は、私をもてあそぶ‥‥ なぜ私の人生は、死者に 操られなければならないのだッ! |
成: |
‥‥それは、あなただけでは ないと思いますが。 |
バ: |
天斎を撃ったのは‥‥そう! ザックなのだ! そうなのだッ! あのザックが逃げたばかりに‥‥ 我が魔術師人生は、闇に閉ざされる。 |
成: |
”或真敷 天斎氏を殺害したのは、 或真敷 ザックである”‥‥ それが”立証”されれば、 あなたは救われる‥‥ そういうコトですか? |
バ: |
そうだッ! そう‥‥ そうなるはずだったのだッ! |
成: |
それならば‥‥今でも、 遅くはないかもしれません。 世間に対して”立証”できる 証拠品があればいいのですから。 天斎氏を殺害したのが ”本当は、誰だったのか?”‥‥ |
成: |
‥‥ここに、あなたの ”お望みのもの”があります。 或真敷 ザックが書いた、 もう1通の書類です。 |
バ: |
こ。これは‥‥なんだ。 じ。<<自白書>>だと‥‥? |
成: |
”或真敷 天斎を殺害した”‥‥ 彼は、そう認めています。 ‥‥よかったですね。 これで、あなたの思いどおりだ。 |
バ: |
‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥ 私は‥‥大魔術師。 人をダマすのがシゴトだ。 観客をダマして、ひとときの 夢を見せる‥‥ ‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥ いつのまにか。 自分自身が観客になっていた。 私は、私をダマしつづける‥‥ |
成: |
ザックさんは、ぼくの目の前で コイツを書き上げました。 ‥‥彼に、あなたの置かれた 立場を説明したときに。 |
バ: |
‥‥‥‥‥‥‥‥あ。 あるまじきィィィィィィィィィッ! |
バ: |
‥‥わかっているのだろう? その<<自白>>が、ウソっぱちだ、と。 |
成: |
はい。或真敷 ザック氏は、誰も 殺害していないと考えています。 |
バ: |
”それなら、ハナシはカンタンだ” ‥‥そう思ってるのだろう? 脅迫状を受け取ったのが、2人。 そのうち1人が無実だとしたら‥‥ 残る1人が、ハンニンだ。 |
成: | ‥‥そうなりますね。 |
バ: |
ステージの相棒をかばって、 その姿をくらます‥‥か。 ハッハッハッハッ‥‥! これはたしかに、美談だ。 |
成: |
あなたが‥‥撃ったんですね? 或真敷 天斎氏の、ヒタイを。 |
バ: |
‥‥それを知って、どうする? 警察に駆け込む、かな? ‥‥好きにしたらいい。 私には、もう何も残っていない。 |
成: | ‥‥‥‥‥‥‥‥ |
バ: |
‥‥さよう。 私には、たいした実力はない。 師匠・天斎の演目が欲しかった。 ‥‥あのときの私は、大魔術の 悪魔にとりつかれていたのだろう。 |
成: |
(やはり‥‥ 或真敷 天斎を撃ったのは、 この或真敷 バランだった‥‥) |
バ: |
クッ‥‥クックックッ‥‥ ‥‥ハッハッハッハッ‥‥! あなたには、ザンネンだが。 我が師匠を撃ったのは、 このバランではないッ! |
成: |
な。なんですって! あなたじゃ、ない‥‥? まさか‥‥まさか! 他にも弟子がいた、とか‥‥? |
バ: |
‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥ たとえば、どのような? |
成: |
あるまじき‥‥ チャランとポラン、とか。 |
バ: |
‥‥その、暴言。 あるまじかるべきムクイをッ! 脅迫状を受け取ったのは、たしかに。 ザックとバランの2人のみ。 しかし‥‥もうヒトリだけ。 ピストルを撃つことができる ニンゲンがいたのです。 ‥‥ここまで言えば、 さすがに、おわかりでしょう? |
成: |
(‥‥天斎氏を撃ったのは、 ザックでもバランでもない‥‥ 撃ったのは‥‥現場にいた、 ”もうひとり”の人物‥‥) ま。まさか‥‥まさか! |
バ: |
‥‥そのとおり。 或真敷 天斎”本人”です。 |
成: |
或真敷 天斎は‥‥自殺だった、 ということですか? |
バ: | ‥‥信じられませんかな? |
成: |
正直なトコロ‥‥ 想像もしていませんでした。 |
バ: |
あの晩、私が訪れたとき。 老人は生きていた。 眠っている‥‥ そのように見えました。 私は‥‥‥ 私は、あの老人を撃てなかった。 背を向けて、 病室を出ようとしたとき‥‥ 老人が、私を呼び止めたのです。 |
成: |
‥‥或真敷 天斎と ハナシをしたんですか。 |
バ: |
ええ。だから、 私は知っていたのですよ。 天斎が、兄弟子‥‥或真敷 ザック に、上演権を譲渡したことを。 |
成: |
そう、だったんですか‥‥ ‥‥どうやら。お詫びを 言わなければなりません。 ”天斎氏を撃ったのは、あなただ” ‥‥ぼくは、そう考えていました。 |
バ: |
‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥ 詫びる必要はないでしょう。 |
成: | ‥‥‥え? |
バ: |
あるイミ‥‥ 私の罪は、殺人よりも重い。 |
成: |
な。なんですって! あなたの”罪”‥‥? |
バ: | ‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥ |
成: |
(或真敷 バランの”罪”‥‥ 師匠の”殺害”以外に、 いったい、何が‥‥) |
バ: |
私は‥‥知っていたのですよ。 脅迫状が2通、あったことを。 |
成: | ‥‥‥! |
バ: |
兄弟子は、隠しゴトができない。 探り出すのはカンタンだった。 ‥‥私には、師匠の計画がわかった。 |
成: |
”どちらかの手で 死のうとしている”‥‥ |
バ: |
まさか、上演権の譲渡まで 考えているとは知りませんでしたが。 しかし‥‥そのとき。 ‥‥私のココロに 悪魔が宿ったのです。 |
成: | 悪魔が‥‥‥ |
バ: |
‥‥告白しましょう。 私は、天斎を撃つつもりでいた。 そして‥‥その”罪”を、兄弟子に 負わせる計画を立てたのです。 |
成: | な‥‥‥なんですって! |
バ: |
私は、あの晩‥‥”あるもの”を 用意して、天斎の病室へ向かった。 |
成: | それは‥‥? |
バ: |
点滴の薬液ですよ、モチロン。 見舞いに行ったとき、調べておいた。 ザックが撃たなかったときは、 この自分がトドメをさす! そして‥‥この薬液を使って、 彼を”殺人者”に仕立てあげる‥‥ それが、私の計画だったのです。 |
成: | そう、だったんですか‥‥ |
バ: |
しかし‥‥ やはり。私には撃てなかった。 私の中の悪魔は去ったのです。 そして‥‥天斎が、私を呼び止めた。 |
天: |
『‥‥おまえには悪いが‥‥ ‥‥ワシのトリックは ザックにゆずることにしたよ‥‥ ‥‥おまえにはまだ、 客を集めるチカラはない‥‥ ‥‥できれば、 ザックをささえてやってくれ‥‥』 |
バ: |
病室を出て‥‥ 私は、立ちつくしていた。 ショックで‥‥動けなかった。 そのとき‥‥聞いたのだ。 運命の、あの銃声を‥‥ |
成: | 或真敷 天斎の、自殺‥‥ですか。 |
バ: |
そして、私のココロに 悪魔がよみがえってしまった。 ‥‥”ザックが殺した”コトに するのだ‥‥ ‥‥そうなれば、 上演権は、私のものになる‥‥ 私は‥‥現場に偽装をほどこした。 天斎の手からピストルを取りあげ、 指紋をふき‥‥そして。 持ってきた薬液を、注射器で 点滴に注入したのだ‥‥ |
成: |
結果的に‥‥あなたの思った とおりの展開になったワケですね。 天斎氏は亡くなり、その罪を ザックさんにかぶせようとした‥‥ |
バ: |
‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥ ”思ったとおり”‥‥か。 現実は多少、ちがう展開を 見せたワケですがね。 さあ‥‥いかがですか? 信じますかな? 私の、この物語を‥‥ |
成: |
‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥ 7年前のことです。 ぼくには、わかりません。 ただ‥‥‥ |
バ: | なんでしょうかな? |
成: |
あなたのクチから聞きたかった。 話していただけて、うれしいです。 |
バ: |
‥‥礼を言うべきなのは、 こちらです。 すべてを失って‥‥ やっと、決心がついた。 |
成: |
‥‥警察へ、 出頭するつもりですか? |
バ: |
兄弟子が消えようとも、 私の罪は消えない。 罪が消えないかぎり、私のまわり からは、すべてが消えていく。 仲間‥‥上演権‥‥ そして、大魔術。 もう、消えるのはタクサンですな。 |
成: | ‥‥わかりました。 |
バ: |
<<死者に操られた人生>>‥‥ 今までずっと、そう思っていました。 しかし、そうではなかった。 或真敷 ザックは、 生きていたのですからね。 |
成: |
(セイカクには‥‥ 彼はもう、いないんだけど) |
バ: |
‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥ もしかすると。 生きていたのは、彼だけでは なかったのかもしれない。 |
成: | ‥‥どういうことですか? |
バ: |
今になって、考えてみると。 私‥‥いや。私たちは、一度も 見ることがなく、終わってしまった。 そう。‥‥”彼女”の遺体を。 |
成: | ”彼女”‥‥? |
バ: |
‥‥いや。考えすぎでしょう。 忘れてください。 ‥‥いつか。我が兄弟子、 或真敷 ザックに会う日が来たら。 そのときは、我がアヤマチを 詫びるコトにしましょう。 今日は、お話しできてよかった。 ‥‥ありがとう。 |
成: |
或真敷 ザック‥‥<<浦伏 影郎>> は、もうこの世にはいない。 法廷で暴かれた”真実”は ほんの一部で‥‥ とらえきれない”闇”は、 新しい事件を生み出した。 その”闇”を払うためには‥‥ もう一度。 ”あの男”に会わなければ ならないのだろう。 |
看: |
‥‥申しわけありません。 牙琉 霧人は今、 <<作業>>に参加しています。 |
成: |
そうですか‥‥ あと、どれぐらいで終わるか、 わかりますか? |
看: | さ。さあ‥‥、それは。 |
成: |
すみませんが‥‥ 聞いてきてもらえますか? |
看: |
はあ‥‥それでは。 ここで少し、お待ちください。 |
成: |
(‥‥看守さんには悪いけど‥‥ どうしても、調べておきたい ことがあるんでね) |
成: |
‥‥そう。こいつだ。 この”黄色の封筒”‥‥ 差出人は、思ったとおり! <<絵瀬 土武六>>‥‥ |
葉: |
『ワタシがアトリエを訪ねたとき‥‥ 土武六氏、机に向かっておりました。 手紙を書いていたようですが‥‥ あわてて封筒に封をしました。 黄色の封筒でしたね。‥‥たしか、 現場に残されていたと聞いてますよ。』 |
成: |
これが‥‥絵瀬 土武六が書いた、 <<最後の手紙>>だとすれば。 やっておかなければならない ことがある。 ‥‥それで、ぼくにできる 調査はすべて、終了する。 ‥‥調べてみるんだ! <<アトロキニーネ>>を検出する、 この毒性探知スプレーで‥‥ |
成: |
絵瀬 土武六のクチに 毒を運んだ”使者”‥‥ やはり、この切手だった! まちがいない‥‥ 彼の最後の手紙は、牙琉 霧人に 宛てられたものだった! コイツだ‥‥ |
法廷記録にファイルした。 | |
成: |
ついに、手に入れた‥‥ 決定的な<<証拠>>を! |
霧: |
‥‥おや。 独房に泥棒ですか‥‥ |
成: | ‥‥牙琉‥‥! |
霧: |
キミに、そんなシュミがあるとは 知りませんでしたね。 |
成: |
牙琉‥‥ きみに聞きたいことがある。 |
霧: |
残念ですが。私は今、話したい ことは、あまりないのですよ。 お引き取りねがいましょうか。 |
成: |
‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥ 絵瀬 まことさんは、 まだ”判決”を受けていない。 ‥‥わかっているな? 牙琉。 |
霧: |
‥‥あの毒がカラダに回って、 助かった例はありませんが‥‥ ココロしておきましょう。 |
成: |
‥‥それじゃ。 ぼくはこれで失礼するよ。 |
霧: | 待ちたまえ、成歩堂。 |
成: | ‥‥なんだ? 牙琉。 |
霧: |
その手紙、置いていって いただけますか? ‥‥すこし、 プライベートなものなのでね。 |
成: |
ああ‥‥すまないな。 ウッカリしていたよ。 |
霧: | ‥‥どういたしまして‥‥ |
成: |
‥‥以上、すべての<<手がかり>>が 出そろいました。 7年の時を超えて、 この私が用意したものです。 ‥‥さて。 この長い物語に、決着をつける ときがやってきました。 これから始まる、最後の法廷‥‥ <<真実>>を見いだすのは、 あなたがたなのです。 |