御剣 怜侍…茶 | |
糸鋸 圭介…黄土 | |
須々木 マコ…橙 | |
優木 誠人…黄緑 |
御: |
(もう一度、冷静に <<ロジック>>を追うのだ!) |
御: |
本棚には、犯行前と後の2回 あらされているアトがあった。 その2回は別々の人物によるもの とは考えられないか? つまり、今夜私の執務室を 訪れた人物‥‥。 まねかれざる来訪者が、 もう1人いたのだとすれば‥‥! |
御: |
2人目の来訪者が いたとするならば‥‥。 凶器の拳銃のムジュンも解ける。 部屋には2つの弾痕があったが‥‥ 凶器は1発しか 撃たれていなかった。 残り1発を撃った拳銃はもう1人が もちこんだ拳銃なのではないか? そして‥‥ それが私につきつけられた 拳銃だと考えれば‥‥。 |
御: |
ユウキ検事。私は、自分の発言を 訂正しなければならないようだ。 |
優: | やっと分かってくれたみたいだね。 |
マ: | 御剣さん! |
糸: | 御剣検事! 何を言ってるッス! |
御: |
私は大きなカンチガイをしていた。 私は、殺人者と顔を 合わせてはいなかった。 |
優: | どういうことだい? |
御: |
私が出会ったのは、ただの <<ドロボウ>>だった。 |
糸: |
ただの‥‥<<ドロボウ>>? なんかムジュンした言い方ッスね。 |
御: |
<<殺人者>>は、 他にいたということだよ。 今夜、私の部屋に侵入した 人物は2人いたのだ! |
糸: | ど、どういうことッスか? |
御: |
2回あらされた本棚と、2つの 拳銃の存在がそれを示している! ユウキ検事は、スズキさんを だまして私の執務室に侵入した。 |
優: |
きめつけは良くないな。 ボクがやった証拠はないはずだろ? |
御: |
フッ。ただ仮定のハナシを しているだけではないか。 本当にやっていないのならば、 堂々としていたまえ。 |
優: | ‥‥クッ! |
御: |
ユウキ検事の目的は、 何かを盗みだすことだった‥‥ だから、隠し金庫を調べ、 本棚をあらした‥‥これが1回目。 |
糸: |
このとき‥‥ファイルの順番を 間違えてもどしたッスね。 |
御: |
そして、他の場所を 探そうとしたところに‥‥ 仲間戸刑事がやってきた。 |
糸: |
どうして、仲間戸刑事は この部屋に来たッスか? |
御: |
もともとは、ユウキ検事の部屋に 用事があって来たのだろう。 そこで‥‥私の部屋から物音が することに気付いたのかもしれんな。 |
マ: |
あ! 出張で留守中の御剣さんの 部屋から物音がしたから‥‥! |
糸: |
フシンに思って 執務室に入ったッスね! |
御: |
そうだ。彼は、刑事として、 正しい行動をした。 |
マ: |
でも、そこにいたのは、 ジブンの相棒だった‥‥。 |
御: |
彼は、ユウキ検事の姿を見て ユダンしたのだろう。 しかし、ユウキ検事は ヨウシャしなかった。 仲間戸刑事のスキをついて 彼の拳銃をうばうと‥‥! 射殺した。<<ドロボウ>>の瞬間を 見られたことの口封じのために‥‥。 |
優: | ‥‥‥‥‥‥‥‥ |
御: |
このとき、本棚のファイルに ついたのが‥‥1つ目の弾痕だ。 そして、拳銃を投げ捨て、 ユウキ検事は逃走した。 ニセのダイイングメッセージを 用意してからな‥‥。 |
糸: | なんてメイワクなヤツッスか! |
御: |
それだけならば、まだ事件は シンプルなものだった。しかし‥‥ もうひとりの”来訪者”の存在が さらに事件をフクザツにしたのだ。 |
優: | もうひとりの? |
糸: | 来訪者ッスか? |
御: |
そう。もうひとりの来訪者の 目的もまた<<ドロボウ>>だった。 ユウキ検事が逃走したあと、 執務室のカギは開いたままだった。 しかし、そのことを知らない もうひとりの来訪者は‥‥ すでに警備員室から マスターキーを盗みだしていた。 そして、執務室に侵入して 本棚を物色したのだ。 ‥‥これが2回目。<<ドロボウ>>は、 目的のものを見つけたようだな。 |
糸: | 盗まれた0号ファイルッスね! |
御: |
目的のものを手に入れたところに、 今度は、私が帰ってきた。 <<ドロボウ>>は、ジブンの拳銃で 私をおどして逃走した。 このときのイカク射撃で できたのが、2つ目の弾痕だ。 |
糸: |
本棚をあらしたのも、 2つの弾痕を作ったのも‥‥。 別々の人間が やったことだったッスね! |
御: |
そのとおりだ。 これで分かっていただけたかな? 私が会ったのは、<<ドロボウ>> であって、殺人犯ではない! 私が2人目の来訪者に会った時刻の アリバイなど意味がないのだ‥‥。 なぜならば! 犯行は1人目の 来訪者によって行われたのだから! |
優: | クックックックック。 |
糸: | 何がオカシイッスか! |
優: |
さすがだね! その推理ならば、 すべての状況証拠を説明できる‥‥。 |
糸: |
当然ッスよ! 御剣検事の推理ッスからね! |
優: |
でもさ。 あくまで状況証拠だよね。 |
御: | ! |
優: |
もしも‥‥もしもだよ? キミの推理が当たってるとしてさ。 たしかに、ボクが主張した アリバイは意味がなくなる。 でもさ。ケッキョクのところ 証拠がないよね。 ボクがその1人目の”来訪者” だったという証拠が‥‥さ。 |
糸: |
うおおおおお! 御剣検事! どうなんッスか! |
御: | ‥‥‥‥たしかに、証拠はない。 |
マ: | そんなあ‥‥。 |
糸: | く、くやしいッス! |
優: |
でもさ。ボクにはフシギだな。 ミツルギ検事が出会った‥‥ <<ドロボウ>>だったっけ? なんで、そいつを疑わないのさ? キミの推理が正しいとしても‥‥ |
優: |
『ミツルギ検事の会った <<ドロボウ>>が1番あやしいだろ?』(推理1) 『今すぐ、そいつを探すべきだよ。 まだ近くにいるかもしれない。』(推理2) 『さっきも言ったけど、ボクは自分の 部屋でトレーニングをしていた。』(推理3) 『そこにリョウが来たから、証拠品を 受け取って警察局に向かったんだ。』(推理4) 『そのあとのことは、 よくわからないよ。』(推理5) |
御: | <<ドロボウ>>を探すべき‥‥か。 |
優: |
そうさ。こんなムダな議論を している場合じゃないよ! |
御: |
いや。私にとっては、 キミのアリバイのほうが興味深い。 続けてくれたまえ。 |
優: | ‥‥‥‥‥‥。 |
御: |
(ユウキ検事は、ウソをついている。 彼は、必ず現場にいたはずだ。 どうにかして、そのことを 証明しなければ‥‥!) |
御: |
そのとき、リョウ‥‥仲間戸刑事は 一緒に行かなかったのか? |
優: |
ああ。リョウはちょっと疲れたから 仮眠を取るって言ってたな。 廊下にソファがあるだろ。アイツ、 あそこで寝るクセがあってさ。 |
御: |
彼の持ってきた 証拠品というのは? |
優: |
昨日起きた事件の証拠品でね。 <<拳銃>>と<<ペンダント>>の2つさ。 |
御: |
(‥‥フッ。なるほど。この証言、 聞き逃すわけにはいかないな) |
優: |
『昨日起きた事件の証拠品でね。 <<拳銃>>と<<ペンダント>>の2つさ。』(推理6) |
御: |
2つの証拠品か‥‥。 キミは、検事としては”落第”だな。 |
優: | ”落第”? |
御: |
”恥を知れ”ということだよ。 証拠品を、隠そうとするとはな! |
優: |
な、なんだよ。 ボクは、何も隠してなんか‥‥。 |
御: | この証拠品を見てもらおうか。 |
マ: |
あッ! ”3つの証拠品”って 書いてあるッスよ! |
御: |
そう。これこそが、被害者から キミへのメッセージだ。 |
優: |
あいつ‥‥! ちくしょうッ! 余計なことを! |
御: |
あと1つの証拠品。 どこにいったのかな! |
優: | ‥‥そ、そんなものは。 |
御: |
その顔は‥‥ 持っているな。 イトノコギリ刑事! |
糸: |
はいッス! 調べさせてもらうッスよ! |
優: |
な! キサマ! やめろ‥‥。 |
糸: |
これは、捜査のイッカンッス! キョヒすることはできないッスよ! |
優: | やめろおおおおおおお! |
糸: |
あッ! これは! こんなものを持っていたッス! |
御: |
どうやら、それが隠そうとした 証拠品のようだな。 |
糸: | どうして、隠そうとしたッスか! |
御: |
フッ。殺人犯が証拠を隠す理由は ただひとつ‥‥ それが、自分の犯行を指し示す 決定的な証拠だからだ。 |
優: | ‥‥‥‥うぐぐぐ。 |
御: |
このビデオテープ‥‥ 調べさせてもらうとしよう! 彼は、ビデオテープの この部分を隠そうとしたのだ! |
糸: |
あッ! これ、血痕じゃないッスか! |
御: |
この血痕こそ、 ユウキ検事が隠そうとしたものだ! この血痕‥‥まだ新しいな。 |
糸: |
もしかして、この血! 仲間戸刑事のものじゃないッスか! |
優: |
‥‥ち、ちちちちち、ちがッ! ちがッう! |
御: |
フッ。ムダなあがきだな。 血液鑑定をすればわかることだ。 |
優: | うううう‥‥ |
御: |
さきほど君は、被害者から 証拠品を受け取ったといったな。 それでは、いつ、どうして 被害者の血痕がつくというのだ? |
マ: | そうッス! オカシイッス! |
御: |
それは、犯行の瞬間しかない! 仲間戸刑事は、ビデオテープを もっているときに殺されたのだ! |
優: |
リョウがこのビデオを持っていたか、 証明することはできない! |
御: |
フッ。ビデオについた指紋を 調べればわかることだよ。 |
優: | うがあッ! |
御: |
そのビデオテープを もっている以上‥‥。 キミこそが仲間戸刑事を 殺害した殺人犯に他ならない! |
優: |
まさか! マサカッ! ボクがッ! この、ぼ、ボクがッ! ボクが、がががががががががががが ががががががががががががががッ! |
上級検事執務室・1202号 | |
糸: |
優木 誠人を、仲間戸刑事 殺害容疑でタイホしたッス! |
御: | うム。 |
糸: |
ビデオテープに行った科学捜査の 結果が、決め手になったッス! あの血痕は、やっぱり 仲間戸刑事のものだったッス。 トドメに、仲間戸刑事の 指紋もちゃんと採取されたッスよ! |
マ: |
御剣検事殿! ありがとうございましたッ! 法廷以外で御剣さんの推理が 見られるなんて! スズキ、カンゲキッス! |
御: |
いや。むしろ私の執務室で 起きた事件に巻き込んでしまった。 申し訳ない‥‥。 |
マ: |
これぐらい、スズキにとっては、 たいしたことじゃないッスよ! 空き巣と殺人犯だけですんで、 まだラッキーだったと思うッス! これで、強盗や誘拐犯まで現れたら、 スズキにはお手上げッスから。 自分も、やっと<<不幸なヒト>> レベルに近づいてきたッスよ! |
御: |
(‥‥別の警備員をやとった ほうが安全ではないか?) |
糸: |
しかし‥‥優木検事は、 とんだ悪徳検事だったみたいッスね。 |
御: | 悪徳検事だと? |
糸: |
担当した裁判に不自然なところが 多かったというハナシッス。 証拠品をネツゾウしているという ウワサもあったみたいッスよ。 |
御: | (証拠品のネツゾウか‥‥) |
糸: |
理由のアイマイな不起訴も よくあったらしいッス。 |
マ: |
検事のカザカミにも おけないヤツッスね! |
御: |
彼は私の執務室に侵入した 目的を話したのかね? |
糸: |
それが‥‥そのことになると 黙ってしまうッスよ。 |
御: |
(何かを盗もうとしていたのは たしかなのだが‥‥) |
糸: |
ここだけの話ッスけど‥‥。 巨大な”組織”とのツナガリが ウワサされていたみたいッスね。 |
御: |
”組織”か‥‥。 ユウキ検事が口を割らないのは、 それが関係しているのかもしれんな。 ‥‥やはり、事件はカンゼンに 解決したとはいえないようだ。 |
糸: |
えッ! 優木検事が 犯人じゃなかったッスか? |
御: |
そうではない。まだナゾが 残っているということだよ。 この証拠品のナゾがまだ 解けていない‥‥。 |
御: |
このファイルを盗んだ人物。 もう一人の侵入者の正体‥‥。 |
糸: | いったいダレが盗んだッスかね? |
御: |
盗まれたファイルの中身は、 どこに行ったのか? (私に拳銃をつきつけた人物‥‥。 いったい何者だったのだ?) |
鑑: | 御剣検事殿! |
御: | なんだね? |
鑑: |
さきほど御剣検事の執務室を 捜査していて、これを発見しました。 |
御: | これは‥‥? |
糸: |
なんッスかね、このカード。 ‥‥トリのマークッスか? |
御: |
いや‥‥。 これは、カラスのマークだ。 <<3本足のカラス>>のな。 イトノコギリ刑事、 キミも知っているはずだぞ。 |
糸: |
あ! これ! あのちまたを 騒がせた大ドロボウの! |
御: |
そう。これは、大ドロボウ <<ヤタガラス>>のマークだ。 かつて、世間をさわがせた 1人の”ギゾク”がいた。 正体不明・神出鬼没の 大ドロボウ”ヤタガラス”。 その姿も、目的もナゾだったが、 ヤツのターゲットは、決まっていた。 不正を働いている企業から、 その証拠を盗み出し公開する。 ヤタガラスの犯行は、”静か”に、 そして”カンペキ”に実行される。 どこかの怪盗のように、おおげさな 予告状を出したりはしない。 ターゲットにされた企業は、 侵入されたことにすら気づかない。 ただ、ある日突然マスコミに不正の 証拠が送りつけられてくるのだ。 この1枚のカードとともに‥‥。 ここしばらくは、 現れていなかったはずだが‥‥。 |
糸: |
あッ! 御剣検事! カードの裏側を見るッス! |
御: | ムッ。これは‥‥。 |
糸: |
御剣検事の部屋の番号と<<証拠品を 確保>>って書かれているッス! |
御: |
(ファイルを盗んでいったのは、 <<ヤタガラス>>だというのか?) <<ヤタガラス>>‥‥<<組織>>‥‥。 キーワードは集まり始めている。 私の執務室で起きた殺人事件。 大ドロボウ<<ヤタガラス>>の復活。 しかし‥‥。今思えば、 ”予兆”はすでに現れていた。 2日前のあの事件から、 すべては始まっていたのだ‥‥。 |