御剣 怜侍…茶 | |
糸鋸 圭介…黄土 | |
狩魔 冥…水 | |
木之路 いちる…緑 | |
白音 若菜…紫 | |
ジンク・ホワイト…青 |
御: |
(私の執務室で起きた殺人事件。 大ドロボウ<<ヤタガラス>>の復活。 今思えば、2日前のあのとき すべては始まっていたのだ‥‥) |
御: |
(事件は、上空3000メートルの 密室から始まった) |
ア: |
本日は、ゴーユーエアラインの ご利用ありがとうございます。 気流の乱れにより、機内が大きく 揺れる場合がございます。 お席に座っておくつろぎ いただきますようお願いいたします。 |
G−390機内 1Fラウンジ | |
御: |
‥‥ム。 ‥‥悪い夢を見ていたような 気がする。 (6時13分か。 10分ほど気絶していたようだ) |
ア: |
エアポケットによって機内が大きく 揺れたことをおわび申し上げます。 安全のため客席にお戻りいただき シートベルトをお締めください。 |
御: |
(エアポケットか‥‥ 地震のたぐいには、 いまだに慣れない‥‥ ん? これは‥‥サイフ? 私のものではないが‥‥ なぜこんなものが、 ポケットに‥‥? くっ‥‥! まだアタマが痛むな‥‥ サイフは、あとで落とし物として 届けるとするか‥‥) 地震のつぎは、エレベータか。 ‥‥‥‥‥‥‥‥ フッ。 何をためらっているのだ、私は。 (ためらう理由は、分かっている。 あれは、まだおさないころ‥‥ エレベータで起きた事件に 巻き込まれたことがあるからだ。 しかし、いつまで過去の悪夢に しばられている‥‥? エレベータなど、たいした シロモノではない!) |
御: |
なっ‥‥なんだとぉぉぉぉっ! どういうことだッ! |
?: |
どうされましたか、お客様? 席にお戻りを‥‥ キャアァァァァァッ! し、し、死んでるぅぅっ‥‥!! |
御: |
おちつきたまえ、状況を ハアクしなければ‥‥ |
客: | どうした? 何かあったのか? |
?: | ひとごろしぃぃぃっ! |
御: |
なっ! ち、ちがう! 私ではない! |
G−390機内 2F客席 | |
木: |
‥‥皆様、おそろいに なったようですね。 CAチーフの木之路 いちる (このみちいちる)と申します。 ご存じのとおり、先ほど機内で アクシデントがございました。 |
客: | アクシデント? 殺人事件だろ! |
客: |
ど、どうなってるんだよ。 この飛行機は! |
木: |
ご心配いただかなくても、 大丈夫でございます。 当機は、予定通りのスケジュールで 航行いたします。 気流の乱れがまだ続いて おります。 しばらくの間、席をお立ちに なりませんよう‥‥。 |
客: |
で、でも。ヒトが 殺されたんだよね? 犯人は‥‥ |
木: |
ご安心ください、お客さま。 ‥‥犯人は、すでに 捕まっておりますので。 |
御: | ‥‥冷静になっていただきたい。 |
客: | なに言ってるんだ、コイツ! |
御: |
私は、検事の御剣というものだ。 断じて、殺人犯ではない。 |
客: |
ハッ! 検事ともあろうものが、 殺人とはね! |
御: |
ちがう。私は、殺してなどいない。 死体を発見しただけだ。 |
木: |
お言葉ではございますが‥‥。 御剣さまが犯人なのは、 マチガイございません。 プロのCAとして、 断言させていただきます。 |
御: | ‥‥どういうことだろうか? |
木: |
わたくし、見たのでございます。 御剣さまが犯人である、 ”決定的な証拠”を。 |
御: | (”決定的な証拠”‥‥だと?) |
木: |
到着地の警察には、 すでに通報済みでございます。 空港に到着するまでは、機長権限で 拘束させていただきます。 ごヨウシャくださいませ。 |
御: |
(どうやら、状況は悪い方向へ 向かっているようだな‥‥ しかし‥‥このままヌレギヌを 着せられるわけにはいかない!) コノミチさん‥‥だったかな。 |
木: | はい。 |
御: |
私に、チャンスを くれないだろうか? |
木: | チャンスですか‥‥? |
御: |
聞かせてもらえないだろうか? あなたの言う”決定的な証拠”とは 何なのか‥‥。 |
木: | ‥‥‥‥‥‥ |
御: |
何の弁明も聞かないまま、 犯人だと決め付けてしまうのが、 プロのCAとして 正しい態度なのだろうか? |
木: |
‥‥‥‥‥‥。 わかりました。 お話しするのは、 かまいませんが‥‥。 発言には、 どうかお気をつけくださいませ。 ヘタな弁明は、御剣さまへの疑いを 濃くするだけですわ。 そう何度も、御剣さまのイイワケを 聞いている時間はございませんので。 |
御: |
‥‥‥‥。 ムロン、わかっているつもりだ。 |
木: | それでは、よしなに。 |
御: |
(私は、自分が殺していないという 事実を知っている。 彼女の言う”決定的な証拠”が 何なのかはわからないが‥‥ そこには、何かほころび‥‥ ”ムジュン”があるはずだ) |
木: |
『プロのCAとして 断言させていただきます。』(推理1) 『残念ですが、御剣さまが犯人なのは マチガイございません。』(推理2) 『エレベータで、 わたくしは見ましたもの‥‥。』(推理3) 『御剣さまが、血だらけの 凶器を持って立っているのを!』(推理4) 『どうか空港に着くまで、 そのまま動かないでくださいませ。』(推理5) |
御: |
(これが、 ”決定的な証拠”か‥‥) |
木: |
これ以上ないカンペキな 目撃証言かと思われます。 いかがでしょうか御剣さま? |
御: |
(どうやら突破口は 見えたようだな‥‥) |
御: | コノミチさん! |
木: |
な、なななな、なんで ございますか! 突然に! |
御: |
(しまった。いつものクセで 叫んでしまった‥‥ まあいい‥‥) コノミチさん。 あなたは見たというのですか。 血だらけの凶器を‥‥ |
木: |
そうです‥‥。 ポタポタと落ちる血‥‥。 今思い出しても恐ろしい光景で ございました‥‥。 |
御: |
残念だが‥‥。あなたは、 プロのCAとしては失格のようだ。 |
木: | な、なんですって! |
御: |
これを見ていただこう! これが何か、 お分かりになるだろうか? |
木: |
サイフ‥‥でございますね。 持ち運ぶには、いささか 大きいようですが。 |
御: |
エレベータで死体が発見されたとき、 私が持っていたもの‥‥ それがこのサイフなのだよ。 |
木: | えっ! そんな‥‥! |
御: |
私は、サイフで人が殺せるとは 思わないが? |
木: |
でも‥‥でも‥‥! 私は! いや、わたくしは‥‥ サイフから 血が落ちるのを見ましたわ! |
御: |
このサイフ。ごらんの通りシミが ついている。 ニオイをかいでみるといい。 この豊かな香り‥‥。 これは、ぶどうジュースの シミなのだよ。 |
木: | あっ! じゃ、じゃあ‥‥! |
御: |
そう。あなたは、ぶどうジュースを 血と見間違えた! 血だらけの凶器など、 存在しなかったのだ! |
木: | そ、そんなああああああっ! |
御: |
(うム‥‥。これで、 私のヌレギヌも晴れたか) |
木: |
ま、待ってください! でも! さ、サイフだって、重いものを つめれば凶器になりますですわ! 中身を、見せてください‥‥ でございます! |
御: |
(ドウヨウしているのか、ケイゴが あやしくなって来たな) 中を見るまでもない。 軽いものだ。 |
木: |
いいえ! この目で中を見るまで 納得できませんですわ! |
御: |
(やれやれ。 仕方あるまい‥‥) コノミチさん。サイフを開けて、 中を調べてもらえるだろうか? |
木: |
かしこまりました。お客様のモノを 開けるのは、気がすすみませんが。 |
御: |
サイフの中にはパスポートしか 入っていないようだな‥‥。 見ての通り、中に入っていたのは このパスポートだけだ。 凶器に使うのは、不可能だと 言っていいだろう。 納得してもらえたかね? |
木: | お待ちいただけますか、御剣さま。 |
御: | なんだろうか‥‥? |
木: |
そのパスポート‥‥いったい、 どなたのものなのでしょう? |
御: | ‥‥‥‥。 |
木: | 確認させていただきますわ。 |
御: |
うム。 私も気になっていたところだ。 |
御: | こ、これはッ‥‥! |
木: |
やはり、そうでしたか‥‥。 そのサイフは、 アクビー・ヒックスさま‥‥。 つまり、被害者さまの持ち物。 |
情報を書きかえた。 | |
木: |
あなたは、被害者さまのサイフを お盗みになられた‥‥ そう考えてよろしいですね? |
御: | な、なんだとッ! |
木: |
御剣さま自身が おっしゃったのですよ? そのサイフを ニギリシメられていたと。 |
御: | ‥‥‥‥‥‥。 |
木: |
たしかに、わたくしは見間違いを しておりました。でも‥‥。 どうやら、犯人を間違えたわけでは ないようでございますね。 |
木: |
『御剣さまのおっしゃる通り、凶器は そのサイフではありません。』(推理1) 『アクビーさまをお殺しあそばされた あとにうばったものなのですから。』(推理2) 『信じにくいことではありますが、 動機はとてもシンプル‥‥。』(推理3) 『アクビーさまのお金が 目当てだったのでございますね。』(推理4) |
御: |
まだ、私を疑うのですか‥‥。 凶器は持っていなかったというのに。 |
木: |
殺人現場で、被害者のサイフを 持って立っていた‥‥ 疑われるのに十分な理由だと 思われますが、いかがでしょうか? |
御: |
ちょっと 待っていただけるだろうか。 |
木: | ままま、またですか! |
御: |
コノミチさん。 あなたは、気づかないのだろうか? 自分の推理のムジュンに‥‥。 |
木: |
な‥‥なにを、 おっしゃっているのですか? |
御: |
この事件は、金銭目的の 犯行ではありえない。 そんなことは、現場の状況を見れば、 アキラカではないか! (金銭目的の犯行では なかったことを示すのは?) |
御: |
現場に散らばっているものを、 よく見ていただこう。 |
木: | あッ! |
御: |
そう。床に散らばっているのは、 紙幣、そして硬貨‥‥。 あなたの推理によれば、犯人が人を 殺してまで欲しかったはずのものだ。 |
木: | ぐぐッ! |
御: |
おそらく、犯人ともみ合ったとき、 被害者のサイフが落ちたのだろう。 そのとき中身が散らばってしまった。 犯人もそのことに気が付いたはずだ。 しかし! 犯人は散らばった紙幣を 拾おうとすらしていない! |
木: |
で、でも‥‥! サイフを‥‥。 |
御: |
さらに、アクビーのサイフには、 パスポートしか入っていなかった。 |
木: | ああッ! |
御: |
”金目当ての犯行”ならば‥‥。 カラッポのサイフなど盗んで 何になるというのか! |
木: |
うッ‥‥うッ‥‥うッ‥‥。 うあああああああああ でございますわああああ! |
客: | おいおい! どういうことだよ! |
客: |
CAのカンチガイだったって ことなのか? |
客: | あの人は犯人じゃないってこと? |
客: |
ハッ! アホらしい! 人騒がせな! |
木: | うう‥‥‥‥ |
御: |
静かにしていただこう! コノミチさん。 |
木: | ? |
御: |
あなたは、死体を見て 気が動転していた。 そして、うす暗いラウンジで、 エレベータ内からの逆光‥‥。 サイフを凶器と見間違えても おかしくなかった‥‥。 私を犯人だとカンチガイしても 仕方がなかったと私は思う。 |
木: | 御剣さま‥‥。 |
御: | ありがとうございます。 |
?: | ■■■■■■■■■■■■! |
御: | (な、なんなのだッ!) |
?: | ■■■■、■■■■■■■■■! |
御: |
‥‥コノミチさん。 通訳をお願いできないだろうか? |
木: |
ボ、ボルジニア語のようですが、 わ、わたくし、 ボルジニア語はわかりませんので、 もう1人のCAに‥‥ |
?: |
ごまかそうとしてもムダじゃ、 と言っておる! |
御: | ! |
?: |
通訳は必要ないッ! ニホンゴならわかるじゃろ? ん? そこのCAッ! |
木: | は、はいッ! |
?: |
空港につくまで、そいつを コウソクしておくのじゃぞッ! |
御: | ‥‥‥‥ |
木: | ‥‥‥‥ |
御: |
ミスター‥‥。それで、 どういうことなのだろうか? |
?: | なんじゃ? 話は終わったぞ。 |
御: |
私を拘束しろと言った理由‥‥。 セツメイしていただきたい! |
?: |
キサマッ! このワシに、 ムダな時間をつかわせる気かッ! |
御: |
(じ、自分から割り込んで 来たのではないかッ!) |
?: |
ワシは1秒でも長く美術品と タワムれていたいんじゃ! それ以外の時間はすべてムダじゃ! オマエは、アレだな! ワシは知っとるぞ! ”ボウガンムチ”! そうだ。 ニホンゴではそういうはずじゃあ! |
御: |
(ボウガン、ムチ‥‥。 何を言っているのだ?) シツレイだが、アナタは? |
ジ: |
ジンク・ホワイト2世。 ボルジニアきっての大富豪じゃ! しかも、ただの富豪ではないぞ。 美術商‥‥美を売る大富豪じゃあ! |
木: |
ホワイトさま。さきほどのお話は どういうことなのでしょうか? |
ジ: | ん? |
木: |
御剣さまが‥‥。 ”ごまかそうとしている”とか。 |
ジ: |
そこまでセツメイしないと わからんのか! 仕方ないのう‥‥。 一度しか言わんぞ。 ”時ハガネなり”‥‥。 1秒たりともムダにする気はない! |
御: |
(そのわりには、 よくしゃべる‥‥) |
ジ: |
ワシは見たのじゃ。被害者の男が、 そこのエレベータに乗って‥‥。 ラウンジに下りて行くのを! 時間は、午前6時きっかり じゃった! |
御: | ‥‥‥‥ |
木: |
‥‥‥‥ ど、どういうことで ございましょう? |
御: |
(午前6時‥‥‥‥) ご、午前6時だとぉぉぉっ!! |
木: |
きゃあッ! ど、どうされたのですか、御剣さま。 |
ジ: |
気づいたようじゃの。 CAッ! 死体が発見されたのは何時じゃ? |
木: |
エアポケットを抜けたあとですから、 午前6時15分ごろ‥‥あッ! |
ジ: |
アクビーといったか? あの男が殺されたのは、その 15分の間ということになるのう。 その間、ラウンジにいたのは‥‥ そこの検事さんだけじゃろ? |
御: | ‥‥‥‥ |
客: |
そ、そうだ! 私は、ずっと自分の席にいたぞ! |
客: |
わ、私だってそうだ! 映画を見ていたんだ! |
客: |
ボクだって! まだゴハン食べ終わってないもん! |
ジ: |
ほかの乗客も同じアリバイがある。 異論はなかろう。 |
御: | ‥‥‥‥。 |
ジ: |
”モクシテカタラズ”。 やはり、何も言えないか! |
御: |
‥‥現状、その可能性は否定 できない。だが、私ではない。 |
ジ: |
ほう! よく言う! 証拠でもあるのかの? |
木: |
御剣さま‥‥。 やはり、あなたが‥‥。 |
御: |
ミスター・ホワイト。あなたの 目撃証言、たしかなのだろうな? ‥‥‥‥ |
ジ: |
あたりまえじゃ! ワシは、 あの男をずっと見ておった。 ずーっと小さな‥‥。ええと‥‥。 ”マシーン”を、いじっていてな! |
御: | ましーん? |
ジ: |
ほら。ニホンゴだとそういうじゃろ。 ずっとカチカチといじっていて、 うるさくてしかたがなかったわ! |
御: |
(どうもヨウリョウをえないが、 コンピュータか何かだろうか?) |
木: |
ホワイトさまがおっしゃりたいのは、 携帯電話のことですわ。 たしかに、被害者さまは携帯電話を 大切そうに持っておられました。 |
御: |
(携帯電話? ファーストクラスの 客らしくないな‥‥) |
ジ: |
ワシは、あの手の”マシーン”が 大キライでな! 美しさのかけらもない! ピコピコ 品のない音を出しおってからに! とにかく、ワシはまちがいなく 見たのじゃあ! |
御: | コノミチさん。 |
木: | はい‥‥ |
御: |
私に、事件現場を調べさせて もらえないだろうか? |
木: |
ええっ! 現場を‥‥でございますか? |
御: |
少し時間をいただければ、私が犯人 ではないことを証明してみせよう。 |
ジ: |
ふん。ムボウじゃな。 ”トンデヒニイルマツムシヤ”。 たしかニホンゴでは そう言うんじゃったの。 |
御: |
さきほども、私は自分の ヌレギヌを晴らした。 今回も‥‥かならずウタガイを 晴らしてみせよう。 |
木: | ‥‥‥‥‥‥。 |
御: |
コノミチさん! 空港に着くまで待っていたら、 証拠が消えてしまう可能性もある! |
木: |
‥‥‥‥‥‥。 ‥‥わかりました。 機長に、きいてみましょう。 |
ジ: |
ハッ! そんなことが許される はずがないわ! |
木: |
お静かに! 緊急時の判断は、 機長に権限がございます。 機長の判断をきいて まいりますので、 しばらくお待ちくださいませ。 |
ジ: |
調査をするなどと言って、証拠を 消すつもりなのではないかね? |
御: | そんなことは、断じてしない! |
ジ: | ハッ! どうだかな! |
木: |
御剣さま。機長から、 事件現場の調査許可が出ました。 |
ジ: | ま、まさか! |
御: | コノミチさん。感謝する。 |
木: |
ただし‥‥ わたくしの監視のもとで、 という条件付きですが よろしいですね? |
御: |
それは、構わない。 私が疑われていることを考えれば、 当然の判断だろう。 |
ジ: | うぬうううう。 |
木: |
御剣さまの調査は、わたくしが、 セキニンをもって監視いたします。 皆様は、安心しておくつろぎ くださいませ。 それでは、御剣さま。 参りましょうか。 わたくしに御用があるときは Yボタンをおしてくださいませ。 |
御: |
(事件現場は、 1Fのラウンジだったな‥‥) |