第2話『逆転エアライン』前編(その1)

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御剣 怜侍…茶
糸鋸 圭介…黄土
狩魔 冥…水
木之路 いちる…緑
白音 若菜…紫
ジンク・ホワイト…青
(フォントサイズをご都合に合わせて変えて、お楽しみください。量が多いので、最小が オススメ)


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御: (私の執務室で起きた殺人事件。
大ドロボウ<<ヤタガラス>>の復活。
今思えば、2日前のあのとき
すべては始まっていたのだ‥‥)


〜2日前〜

御: (事件は、上空3000メートルの
密室から始まった)
ア: 本日は、ゴーユーエアラインの
ご利用ありがとうございます。
気流の乱れにより、機内が大きく
揺れる場合がございます。
お席に座っておくつろぎ
いただきますようお願いいたします。


3月12日 午前6時13分
G−390機内 1Fラウンジ

御: ‥‥ム。
‥‥悪い夢を見ていたような
気がする。
(6時13分か。
10分ほど気絶していたようだ)
ア: エアポケットによって機内が大きく
揺れたことをおわび申し上げます。
安全のため客席にお戻りいただき
シートベルトをお締めください。
御: (エアポケットか‥‥
地震のたぐいには、
いまだに慣れない‥‥
ん? これは‥‥サイフ?
私のものではないが‥‥
なぜこんなものが、
ポケットに‥‥?
くっ‥‥!
まだアタマが痛むな‥‥
サイフは、あとで落とし物として
届けるとするか‥‥)
地震のつぎは、エレベータか。
‥‥‥‥‥‥‥‥
フッ。
何をためらっているのだ、私は。
(ためらう理由は、分かっている。
あれは、まだおさないころ‥‥
エレベータで起きた事件に
巻き込まれたことがあるからだ。
しかし、いつまで過去の悪夢に
しばられている‥‥?
エレベータなど、たいした
シロモノではない!)

(エレベータが開く)
御: なっ‥‥なんだとぉぉぉぉっ!
どういうことだッ!
?: どうされましたか、お客様?
席にお戻りを‥‥
キャアァァァァァッ!
し、し、死んでるぅぅっ‥‥!!
御: おちつきたまえ、状況を
ハアクしなければ‥‥
客: どうした? 何かあったのか?
?:ひとごろしぃぃぃっ!
御: なっ! ち、ちがう!
私ではない!


同日 午前6時41分
G−390機内 2F客席

木: ‥‥皆様、おそろいに
なったようですね。
CAチーフの木之路 いちる
(このみちいちる)と申します。
ご存じのとおり、先ほど機内で
アクシデントがございました。
客: アクシデント? 殺人事件だろ!
客: ど、どうなってるんだよ。
この飛行機は!
木: ご心配いただかなくても、
大丈夫でございます。
当機は、予定通りのスケジュールで
航行いたします。
気流の乱れがまだ続いて
おります。
しばらくの間、席をお立ちに
なりませんよう‥‥。
客: で、でも。ヒトが
殺されたんだよね? 犯人は‥‥
木: ご安心ください、お客さま。
‥‥犯人は、すでに
捕まっておりますので。
御: ‥‥冷静になっていただきたい。
客:なに言ってるんだ、コイツ!
御: 私は、検事の御剣というものだ。
断じて、殺人犯ではない。
客: ハッ! 検事ともあろうものが、
殺人とはね!
御: ちがう。私は、殺してなどいない。
死体を発見しただけだ。
木: お言葉ではございますが‥‥。
御剣さまが犯人なのは、
マチガイございません。
プロのCAとして、
断言させていただきます。
御:‥‥どういうことだろうか?
木: わたくし、見たのでございます。
御剣さまが犯人である、
”決定的な証拠”を。
御: (”決定的な証拠”‥‥だと?)
木: 到着地の警察には、
すでに通報済みでございます。
空港に到着するまでは、機長権限で
拘束させていただきます。
ごヨウシャくださいませ。
御: (どうやら、状況は悪い方向へ
向かっているようだな‥‥
しかし‥‥このままヌレギヌを
着せられるわけにはいかない!)
コノミチさん‥‥だったかな。
木:はい。
御: 私に、チャンスを
くれないだろうか?
木:チャンスですか‥‥?
御: 聞かせてもらえないだろうか?
あなたの言う”決定的な証拠”とは
何なのか‥‥。
木:‥‥‥‥‥‥
御: 何の弁明も聞かないまま、
犯人だと決め付けてしまうのが、
プロのCAとして
正しい態度なのだろうか?
木: ‥‥‥‥‥‥。
わかりました。
お話しするのは、
かまいませんが‥‥。
発言には、
どうかお気をつけくださいませ。
ヘタな弁明は、御剣さまへの疑いを
濃くするだけですわ。
そう何度も、御剣さまのイイワケを
聞いている時間はございませんので。
御: ‥‥‥‥。
ムロン、わかっているつもりだ。
木:それでは、よしなに。
御: (私は、自分が殺していないという
事実を知っている。
彼女の言う”決定的な証拠”が
何なのかはわからないが‥‥
そこには、何かほころび‥‥
”ムジュン”があるはずだ)

(木之路が見たもの)
木: 『プロのCAとして
断言させていただきます。』(推理1)
『残念ですが、御剣さまが犯人なのは
マチガイございません。』(推理2)
『エレベータで、
わたくしは見ましたもの‥‥。』(推理3)
『御剣さまが、血だらけの
凶器を持って立っているのを!』(推理4)
『どうか空港に着くまで、
そのまま動かないでくださいませ。』(推理5)
御: (これが、
”決定的な証拠”か‥‥)
木: これ以上ないカンペキな
目撃証言かと思われます。
いかがでしょうか御剣さま?
御: (どうやら突破口は
見えたようだな‥‥)

(「推理4」に「サイフ」をつきつける)
御:コノミチさん!
木: な、なななな、なんで
ございますか! 突然に!
御: (しまった。いつものクセで
叫んでしまった‥‥
まあいい‥‥)
コノミチさん。
あなたは見たというのですか。
血だらけの凶器を‥‥
木: そうです‥‥。
ポタポタと落ちる血‥‥。
今思い出しても恐ろしい光景で
ございました‥‥。
御: 残念だが‥‥。あなたは、
プロのCAとしては失格のようだ。
木:な、なんですって!
御: これを見ていただこう!
これが何か、
お分かりになるだろうか?
木: サイフ‥‥でございますね。
持ち運ぶには、いささか
大きいようですが。
御: エレベータで死体が発見されたとき、
私が持っていたもの‥‥
それがこのサイフなのだよ。
木:えっ! そんな‥‥!
御: 私は、サイフで人が殺せるとは
思わないが?
木: でも‥‥でも‥‥!
私は! いや、わたくしは‥‥
サイフから
血が落ちるのを見ましたわ!
御: このサイフ。ごらんの通りシミが
ついている。
ニオイをかいでみるといい。
この豊かな香り‥‥。
これは、ぶどうジュースの
シミなのだよ。
木:あっ! じゃ、じゃあ‥‥!
御: そう。あなたは、ぶどうジュースを
血と見間違えた!
血だらけの凶器など、
存在しなかったのだ!
木:そ、そんなああああああっ!
御: (うム‥‥。これで、
私のヌレギヌも晴れたか)

(待った!)
木: ま、待ってください!
でも!
さ、サイフだって、重いものを
つめれば凶器になりますですわ!
中身を、見せてください‥‥
でございます!
御: (ドウヨウしているのか、ケイゴが
あやしくなって来たな)
中を見るまでもない。
軽いものだ。
木: いいえ! この目で中を見るまで
納得できませんですわ!
御: (やれやれ。
仕方あるまい‥‥)
コノミチさん。サイフを開けて、
中を調べてもらえるだろうか?
木: かしこまりました。お客様のモノを
開けるのは、気がすすみませんが。

(「サイフの中」を調べる)
御: サイフの中にはパスポートしか
入っていないようだな‥‥。
見ての通り、中に入っていたのは
このパスポートだけだ。
凶器に使うのは、不可能だと
言っていいだろう。
納得してもらえたかね?

(待った!)
木: お待ちいただけますか、御剣さま。
御:なんだろうか‥‥?
木: そのパスポート‥‥いったい、
どなたのものなのでしょう?
御:‥‥‥‥。
木:確認させていただきますわ。
御: うム。
私も気になっていたところだ。

御:こ、これはッ‥‥!
木: やはり、そうでしたか‥‥。
そのサイフは、
アクビー・ヒックスさま‥‥。
つまり、被害者さまの持ち物。

<<サイフ>>の
情報を書きかえた。
木: あなたは、被害者さまのサイフを
お盗みになられた‥‥
そう考えてよろしいですね?
御:な、なんだとッ!
木: 御剣さま自身が
おっしゃったのですよ?
そのサイフを
ニギリシメられていたと。
御:‥‥‥‥‥‥。
木: たしかに、わたくしは見間違いを
しておりました。でも‥‥。
どうやら、犯人を間違えたわけでは
ないようでございますね。

(木之路の推理)
木: 『御剣さまのおっしゃる通り、凶器は
そのサイフではありません。』(推理1)
『アクビーさまをお殺しあそばされた
あとにうばったものなのですから。』(推理2)
『信じにくいことではありますが、
動機はとてもシンプル‥‥。』(推理3)
『アクビーさまのお金が
目当てだったのでございますね。』(推理4)
御: まだ、私を疑うのですか‥‥。
凶器は持っていなかったというのに。
木: 殺人現場で、被害者のサイフを
持って立っていた‥‥
疑われるのに十分な理由だと
思われますが、いかがでしょうか?

(「推理4」に「死体の状況メモ」をつきつける)
御: ちょっと
待っていただけるだろうか。
木:ままま、またですか!
御: コノミチさん。
あなたは、気づかないのだろうか?
自分の推理のムジュンに‥‥。
木: な‥‥なにを、
おっしゃっているのですか?
御: この事件は、金銭目的の
犯行ではありえない。
そんなことは、現場の状況を見れば、
アキラカではないか!
(金銭目的の犯行では
なかったことを示すのは?)

(「周囲のお金」をつきつける)
御: 現場に散らばっているものを、
よく見ていただこう。
木:あッ!
御: そう。床に散らばっているのは、
紙幣、そして硬貨‥‥。
あなたの推理によれば、犯人が人を
殺してまで欲しかったはずのものだ。
木:ぐぐッ!
御: おそらく、犯人ともみ合ったとき、
被害者のサイフが落ちたのだろう。
そのとき中身が散らばってしまった。
犯人もそのことに気が付いたはずだ。
しかし! 犯人は散らばった紙幣を
拾おうとすらしていない!
木: で、でも‥‥!
サイフを‥‥。

(御剣検事「異議あり!」)
御: さらに、アクビーのサイフには、
パスポートしか入っていなかった。
木:ああッ!
御: ”金目当ての犯行”ならば‥‥。
カラッポのサイフなど盗んで
何になるというのか!
木: うッ‥‥うッ‥‥うッ‥‥。
うあああああああああ
でございますわああああ!
客: おいおい! どういうことだよ!
客: CAのカンチガイだったって
ことなのか?
客: あの人は犯人じゃないってこと?
客: ハッ! アホらしい!
人騒がせな!
木:うう‥‥‥‥
御: 静かにしていただこう!
コノミチさん。
木:
御: あなたは、死体を見て
気が動転していた。
そして、うす暗いラウンジで、
エレベータ内からの逆光‥‥。
サイフを凶器と見間違えても
おかしくなかった‥‥。
私を犯人だとカンチガイしても
仕方がなかったと私は思う。
木:御剣さま‥‥。

(拘束を解く)
御:ありがとうございます。
?: ■■■■■■■■■■■■!
御:(な、なんなのだッ!)
?: ■■■■、■■■■■■■■■!
御: ‥‥コノミチさん。
通訳をお願いできないだろうか?
木: ボ、ボルジニア語のようですが、
わ、わたくし、
ボルジニア語はわかりませんので、
もう1人のCAに‥‥
?: ごまかそうとしてもムダじゃ、
と言っておる!
御:
?: 通訳は必要ないッ!
ニホンゴならわかるじゃろ? ん?
そこのCAッ!
木:は、はいッ!
?: 空港につくまで、そいつを
コウソクしておくのじゃぞッ!
御:‥‥‥‥
木:‥‥‥‥
御: ミスター‥‥。それで、
どういうことなのだろうか?
?: なんじゃ? 話は終わったぞ。
御: 私を拘束しろと言った理由‥‥。
セツメイしていただきたい!
?: キサマッ! このワシに、
ムダな時間をつかわせる気かッ!
御: (じ、自分から割り込んで
来たのではないかッ!)
?: ワシは1秒でも長く美術品と
タワムれていたいんじゃ!
それ以外の時間はすべてムダじゃ!
オマエは、アレだな!
ワシは知っとるぞ!
”ボウガンムチ”! そうだ。
ニホンゴではそういうはずじゃあ!
御: (ボウガン、ムチ‥‥。
何を言っているのだ?)
シツレイだが、アナタは?
ジ: ジンク・ホワイト2世。
ボルジニアきっての大富豪じゃ!
しかも、ただの富豪ではないぞ。
美術商‥‥美を売る大富豪じゃあ!
木: ホワイトさま。さきほどのお話は
どういうことなのでしょうか?
ジ:ん?
木: 御剣さまが‥‥。
”ごまかそうとしている”とか。
ジ: そこまでセツメイしないと
わからんのか!
仕方ないのう‥‥。
一度しか言わんぞ。
”時ハガネなり”‥‥。
1秒たりともムダにする気はない!
御: (そのわりには、
よくしゃべる‥‥)
ジ: ワシは見たのじゃ。被害者の男が、
そこのエレベータに乗って‥‥。
ラウンジに下りて行くのを!
時間は、午前6時きっかり
じゃった!
御:‥‥‥‥
木: ‥‥‥‥
ど、どういうことで
ございましょう?
御: (午前6時‥‥‥‥)
ご、午前6時だとぉぉぉっ!!
木: きゃあッ!
ど、どうされたのですか、御剣さま。
ジ: 気づいたようじゃの。
CAッ!
死体が発見されたのは何時じゃ?
木: エアポケットを抜けたあとですから、
午前6時15分ごろ‥‥あッ!
ジ: アクビーといったか?
あの男が殺されたのは、その
15分の間ということになるのう。
その間、ラウンジにいたのは‥‥
そこの検事さんだけじゃろ?
御:‥‥‥‥
客: そ、そうだ!
私は、ずっと自分の席にいたぞ!
客: わ、私だってそうだ!
映画を見ていたんだ!
客: ボクだって!
まだゴハン食べ終わってないもん!
ジ: ほかの乗客も同じアリバイがある。
異論はなかろう。
御:‥‥‥‥。
ジ: ”モクシテカタラズ”。
やはり、何も言えないか!
御: ‥‥現状、その可能性は否定
できない。だが、私ではない。
ジ: ほう! よく言う!
証拠でもあるのかの?
木: 御剣さま‥‥。
やはり、あなたが‥‥。
御: ミスター・ホワイト。あなたの
目撃証言、たしかなのだろうな?
‥‥‥‥
ジ: あたりまえじゃ! ワシは、
あの男をずっと見ておった。
ずーっと小さな‥‥。ええと‥‥。
”マシーン”を、いじっていてな!
御:ましーん?
ジ: ほら。ニホンゴだとそういうじゃろ。
ずっとカチカチといじっていて、
うるさくてしかたがなかったわ!
御: (どうもヨウリョウをえないが、
コンピュータか何かだろうか?)
木: ホワイトさまがおっしゃりたいのは、
携帯電話のことですわ。
たしかに、被害者さまは携帯電話を
大切そうに持っておられました。
御: (携帯電話? ファーストクラスの
客らしくないな‥‥)
ジ: ワシは、あの手の”マシーン”が
大キライでな!
美しさのかけらもない! ピコピコ
品のない音を出しおってからに!
とにかく、ワシはまちがいなく
見たのじゃあ!
御:コノミチさん。
木:はい‥‥
御: 私に、事件現場を調べさせて
もらえないだろうか?
木: ええっ!
現場を‥‥でございますか?
御: 少し時間をいただければ、私が犯人
ではないことを証明してみせよう。
ジ: ふん。ムボウじゃな。
”トンデヒニイルマツムシヤ”。
たしかニホンゴでは
そう言うんじゃったの。
御: さきほども、私は自分の
ヌレギヌを晴らした。
今回も‥‥かならずウタガイを
晴らしてみせよう。
木:‥‥‥‥‥‥。
御: コノミチさん!
空港に着くまで待っていたら、
証拠が消えてしまう可能性もある!
木: ‥‥‥‥‥‥。
‥‥わかりました。
機長に、きいてみましょう。
ジ: ハッ! そんなことが許される
はずがないわ!
木: お静かに! 緊急時の判断は、
機長に権限がございます。
機長の判断をきいて
まいりますので、
しばらくお待ちくださいませ。
ジ: 調査をするなどと言って、証拠を
消すつもりなのではないかね?
御: そんなことは、断じてしない!
ジ:ハッ! どうだかな!
木: 御剣さま。機長から、
事件現場の調査許可が出ました。
ジ:ま、まさか!
御:コノミチさん。感謝する。
木: ただし‥‥
わたくしの監視のもとで、
という条件付きですが
よろしいですね?
御: それは、構わない。
私が疑われていることを考えれば、
当然の判断だろう。
ジ:うぬうううう。
木: 御剣さまの調査は、わたくしが、
セキニンをもって監視いたします。
皆様は、安心しておくつろぎ
くださいませ。
それでは、御剣さま。
参りましょうか。
わたくしに御用があるときは
Yボタンをおしてくださいませ。
御: (事件現場は、
1Fのラウンジだったな‥‥)

(「1Fラウンジ」へ移動する)


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