「苦しまぬよう止めを刺してやろう」
ヴォルフは心臓を突き刺すように剣を構える。
(死ぬ?……まだだっ…!まだアイツに俺の気持ちを伝えていないじゃないか!)
シリュウの脳裏にキャロルの笑顔が浮かぶ。
「さらば!ドルファンの真なる騎士よ!!」
ヴォルフが剣を振り下ろす。
ドスン!
大地を震わせるほどの威力。当たればどんな強い鎧に身を包んでいても即死だ。
そう、当たれば……。
「馬鹿な!?」
ヴォルフはその顔に明らかな驚愕を浮かべていた。剣は地面に突き刺さっていただけだった。
シリュウは全身のバネを最大限に生かし、後ろに飛び退いていた。
(死ねるものか!)
「うわああぁぁぁぁっ!」
シリュウは残った腕と体力だけで、可能な攻撃を繰り出した。
ヴォルフに体当たりするように繰り出された突き。
「ぬおおぉぉぉっ!?」
ドスッ!
ヴォルフは剣を手放すか否か悩んでしまった。そのわずかな隙が勝負を決めた。
ヴォルフの腹から血が流れる。
「見事……」
ヴォルフが倒れたその時、今まで硬直していたドルファン兵が動いた。そして、それより早くライズが現われた。
それから先は覚えていない。気を失って倒れ、病院に運ばれたらしい。
気が付いたのは今だ。
『やっと気が付いたね!』
「ああ……ピコか…」
その後しばらくピコと話をしていると、
『そうそう、手紙が来てたよ』
ピコの声に扉を見ると、床に手紙が落ちていた。ライズからだった。
それは『共同墓地で待つ』というものだった。
(敵討ちか…)
そう思いながら刀を持ち、簡単に着替える。
「ピコ、すまんが…」
『分かってるよ…。行くんでしょ?気をつけてね』
「ああ」
心配そうな顔のピコにそう言い残し、俺は病院を抜け出して共同墓地に向かった。