ドルファンを訪れて早くも三年目の秋が来た。
その時俺はアンという女性と知り合った。
戦争が無いのは良い事だが、それは終わってはいないのだった。
九月に入って、再び双剣が血に汚れる時が来た。
八騎将も残るはあと四人。そして、戦火が響きわたる。
マクラウド「ゲイル、今だ!」
ゲイル「わかった!騎馬隊、突撃だ!」
ドルファンを訪れて四回目の戦争。死者が多く出たものの、俺たちの部隊は勝利を収めた。
男A「もはや、これまでですな」
男B「すまぬ。キリング……」
キリング「デュノス様。ここはお引き下さい」
デュノス「しかし………」
キリング「今はまだ、勝利を収める事は出来ません」
デュノス「わかった……。キリング。死ぬ時は一緒だ」
そう言ってデュノスは撤退していく。
キリング「さあ、この老いぼれの首を仕留める者はおらぬか?」
マクラウド「ゲイル、奴は今までの八騎将より強いはずだ」
ゲイル「ああ、わかっている。俺もそう感じている」
そして、俺は双剣を引き抜き、
ゲイル「我が名はゲイル=ラバーバ=ウィナー。八騎将の一人、お相手願う!」
キリング「貴方が双剣の翼か………。我が名は『幽鬼のミーヒルビス』!」
ゲイル「出来れば戦いたくはないが、これも役目でな………」
キリング「では、こちらから参りますぞ」
キリングの振りかざした鎌が、俺の頭上に降りてくる。
ゲイル「くっ!もう少し遅れていたら死んでいたな」
何とか双剣で止めたのだが、
キリング「では、これでは?」
キリングの鎌から何かが現われ、俺は重傷を負った。
ゲイル「な、何だ、今の攻撃は!?防ぐ事ができなかった?」
キリング「双剣の翼と言えど、この攻撃は受け止められぬか」
ゲイル「こうなれば、三本の剣を使うしかないか」
キリング「では、これで終わりです」
ゲイル「エクスカリバーよ、頼む!俺に力を貸してくれ!」
するとエクスカリバーは、俺に応えてくれたかのように突然光り出した。
キリング「何!?この光は!?」
ゲイル「今だ!必殺、双剣影撃剣!」
双剣が、油断したキリングを完全に捕らえた。
キリング「デュノス様……、約束は守れませぬ………」
俺はキリングを倒した。
だが、八騎将はまだ三人生きている。そう考えると、この勝利を喜ぶ事は出来なかった。
それから数日後、
いつものようにドルファンで生活している時に、悲劇が再び始まった。
俺は、当日、ソフィアの手紙で『劇に出演する』と言う事でシアターに行ったのだが、
ショウ「あ、ゲイル!」
ゲイル「一体、何が起きているんだ?」
ショウ「爆弾テロだ!」
ゲイル「テロだと!?それじゃあ、ソフィア達は?」
ショウ「今、シアターにいたほとんどの人達が病院に運ばれている」
ゲイル「と言う事は、死者もいるのか?」
ショウ「ああ………」
テロによってシアターが爆破され、死者もいると聞いて、俺は何か嫌な予感がした。
その時、
ピコ「あ、ゲイル!」
ゲイル『ピコ!?お前、何で?』
ピコ「話はあと!それよりソフィアだけど、病院に運ばれたらしいよ」
ゲイル『そうか、ならば病院に向かうまでだ』
ショウ「ゲイル、どうしたんだ?独り言なんか言って?」
ゲイル「悪い!俺は病院へ向かう!」
ショウ「お、おい、ゲイル!?」
俺は、急いで病院へ向かった。
看護婦「あら、どうしたんですか?そんなに慌てて……」
ゲイル「ソフィア、ソフィア=ロベリンゲはどこに?」
看護婦「ロベリンゲさんですか?怪我はあまり無かったのですが…」
ゲイル「ですが?」
看護婦「こちらへ…」
俺は、看護婦と共にソフィアのいる病室へと向かった。
看護婦「ここです」
ゲイル「ソフィア!」
俺はソフィアの元へ駆け寄り、
ゲイル「ソフィア、大丈夫だったか?」
ソフィア「……………」
ゲイル「…ソフィア?」
看護婦「彼女、声が出なくなっているんです」
ゲイル「そんな…嘘だろ………?」
ソフィア「……………」
ソフィアは悲しそうな顔をしている。
ゲイル「…大丈夫。必ず、また元通りに声が出て、歌えるようになるよ」
俺は、とりあえずソフィアを励ました。ソフィアはそれに応えるかのように笑顔を作る。
看護婦「優しくしてあげて下さいね」
ソフィアは看護婦を呼び、何かを伝えようとしている。
看護婦「ゲイルさん。ロベリンゲさんは、来週またお見舞いに来て欲しいと願っています」
ゲイル「ああ。来週も、いや、ずっとお見舞いに来るよ」
そう言うと、ソフィアは顔を少し赤くしていた。
看護婦「すみません、少し休ませてあげないと…」
ゲイル「そう…ですね。ソフィア、また来週来るよ」
そう言って病室を出た後、
看護婦「私、メネシス先生に相談してみます」
ゲイル「はい、お願いします」
看護婦「では………」
看護婦はそう言って立ち去り、俺はとりあえず宿舎に戻った。
ピコ「おかえり。どうだった、ソフィアは?」
ゲイル「……彼女、声が出なくなっている」
ピコ「え?」
ゲイル「爆発のショックか何かで声が出なくなっているんだ」
ピコ「それで、どうするの?」
ゲイル「どうするって、何が?」
ピコ「犯人を探すの?」
ゲイル「探したくても情報が無い。それに今は、ソフィアの側にいてあげたい」
ピコとそんな会話をしている途中、ショウとシュウが訪ねてきた。
ショウ「ゲイル、俺たちと一緒に犯人を探さないか?」
ゲイル「探したいのは当然だが、俺は、ソフィアの側にいてあげないと…」
シュウ「そうか。なら、俺たちで情報を集める。お前は、ソフィアの側にいてあげろ」
ゲイル「……いいのか?」
ショウ「ああ。マクラウドも協力してくれるしな。俺たちだけで探してみせる」
ゲイル「そうか、すまないな」
シュウ「お前が謝ってどうする。お前は、犯人が八騎将だった時に頼む」
ゲイル「やはり、八騎将が犯人かもしれないか?」
ショウ「ああ。だから、その時は頼むぞ」
そう言って、二人は去っていった。
ピコ「良い友達を持ったね」
ゲイル「ああ。俺は、それにちゃんと応えられるようにする」
ピコ「やっと元気が出たね?」
ゲイル「俺が元気じゃないと、ソフィアが心配するからな」
ピコ「あんた、変わったね」
ゲイル「そうか?」
そして、次の日から俺は剣術を修行し、週末はソフィアの病室にいる事にした。
ソフィアはすっかり元気になっているが、まだ声が出ない。
それから数日後。俺の真の力が目覚める事など、俺自身、まだ知る由も無かった。