D26年4月2日、ドルファンに来た傭兵達は外国人傭兵専用の訓練所に集まっていた。
「よく来たな!俺はここの主任教官を担当するヤング・マジョラム大尉だ!」
ヤングは、カタギリ達傭兵にこの養成所での訓練の内容を、一通り説明した。
「この国では銃は使われていない!他の国で銃になれてしまった者は今から剣、槍、弓…どれか好きな物の基礎を教える!…今基礎を習っておかないと、すぐ死ぬことになるぞ!」
と、傭兵達の中から質問が飛んだ。1つだけの、しかし、質問者本人にとっては大事な質問が。
「その三つのうちのどれかじゃないといけないんですか?大尉?」
質問した者以外の傭兵達、ヤングの目線がすべて質問者に集まった。いや、正確にはカタギリは見てなかった。誰であるか、なぜそんな質問をしたのか、わかっているからだ。そして、声は二重だった。
傭兵達の集団の最後尾にその影はいた。声の主は双子だった。そして、完全に近い左右対称だった。二人とも、布に包まれた長い物を体の横に立てていた。
「どういうことだ?…それは槍じゃあないのか?」
ヤングの質問に、双子は同時に頷いた。
「お前らは…」
ヤングは傭兵達の名簿を見て、この双子のデータを確認した。
「フカザキ シン……に、フカザキ レン…か…」
フカザキ(深崎)シン(真)
フカザキ レン(錬)
二人の名前は、そう記されていた。簡単な似顔絵付きで。
「お前らの武器は、いったい何なんだ?」
ヤングがそういうと双子が布を外し始めた。やっぱり同時に。ただ、次の言葉は片方からだった。
「俺、『シン』の武器はこれなんです」
シンが布を外し終えると、棒の両端に、形は槍に似ているが、それよりも幅広く、大きい刃が付いているシンの武器が姿を見せた。長さは150センチくらいか。
あまり間をおかず、レンが口を開いた。
「俺、『レン』の武器はこれです」
こっちのレンの武器は本当にただの棒だった。170センチくらいの、漆黒の棒。
ヤングは冷静だった。すぐに二人に最初の質問の答えを返した。
「シンは槍兵達に入っても問題ないだろう。…レンは、その武器でかまわないが、一応、短剣を持っておけ」
ヤングの言葉が終わって少し経ったとき、誰かが明らかに二人に聞こえるように言った。
「本当にそんな『棒』なんかで戦争にいくつもりかよ!ッハッハ!」
「自分で試してみるか?『これ』で、どんなことができるのか…」
冷笑を浮かべながらレンは言った。挑発された傭兵はもちろんだ、と言って、訓練場のほうに出ていき、そして、剣をかまえた。
「殺した、もしくは再起不能にした場合は処罰だぞ!」
そのヤングの言葉に対し、レンは、
「ご心配なく。あんなのにはやられませんから」
そして、ヤングの心配をよそにレンは相手に向かっていった。
戦いは一瞬だった。上から斬りつけてきた相手の剣を、棒で少し軌道を変え、難なくかわし、レンはしゃがんだ。そしてその反動を利用してジャンプ、下から相手の腹に棒を1発、たたき込んだ。だが、レンはこのとき失敗をしていた。
…全力でやってしまった。
腕力+遠心力+ジャンプした勢い+棒の堅さ。
(やばっ…)
この傭兵は、2時間ほど動かなかった。処罰は何とか受けずに済む事になるが、まだレンはそれを知らない。
レンは傭兵を倒してしまった後、処罰を受けずに済む方法を考えていると、
「てめえ!なにしやがる!」
怒り具合からして、今、浜にうちあげられた魚状態になっているやつの仲間らしい。3人、レンに詰め寄ってきた。
と、東洋人が2人、レンのそばにでた。カタギリとシンである。
「多勢に無勢…か…まあ…雑魚みたいだけど…」
「まったく…雑魚なんだから手加減ぐらいしてやれ!…カタギリ、悪いな…」
前がカタギリ、後がシンの言葉である。
…んで、3対3のバトルロワイヤルに突入した。カタギリはみねうち、シンは刃の反対側での打撃、レンは腹に突きを入れて、1分と経たないうちに終わった。
「…はあ…こいつら…」
問題児だ…好戦的で…そして強いみたいだから、よけいゴタゴタするな…とヤングは思った。
カタギリ、そしてカタギリの知り合いらしき、シンとレンという双子…ドルファンの傭兵部隊に、この三人の東洋人が加わった。
あとがき
ども…O2 焼け付く吹雪 星輪です。
この作品を作って不安になっちゃいました。
本当は宿舎でのシン達とカタギリの会話シーンを入れようと思ったのですが、
養成所のシーンが思ったより長くなってしまったので、カットしてしまいました。(あんまり長いと読者も疲れちゃうし…)
つまり、不安になったのはこれから、計画通りにできるのかな…と。(汗)
ま…とにかく、次回、「ネクセラリア、驚愕」もがんばります。(苦笑)
10月20日 自室にて