D26年7月16日。
この日はカタギリ達の初陣であった。
イリハ会戦。
後にそう呼ばれる戦の中、小隊隊長に選ばれたカタギリ達三人は、初めて、ヴァルファの軍と対峙するのだった。
「弓隊は最前列に!…歩兵隊!最後列に下がって体勢を整えろ!」
カタギリ達の担当は拠点の防衛だった。本隊をすり抜けてきた部隊の迎撃を、カタギリ達は任されていた。
(ここはなんとしてでも守る!)
すでに小隊3つほどを退けていた。
しかし敗戦が濃厚になってきて、とうとう撤退の指示が出された。
撤退をしている途中、4つの小隊が立ちふさがった。
カタギリ達は赤い鎧の兵士の姿を確認した。
「我が名は疾風のネクセラリア!ヴァルファ八騎将の一人だ!この首を欲する者は、この中にはいないのか!?」
傭兵団に動揺が走った。
ヤングは士気を落とすまいと、ネクセラリアに戦いを挑んだ。
ガキィッ………ガッ……
やけに静かに刃のかみあう音が聞こえた。
周りの兵士は時が止まったように2人の決闘を見ていた。
そして。
「ぐはっ……」
大地に伏したのはヤングだった。
槍のリーチによって懐に入れず、舞桜斬は浅くしか入らなかった。
「ヤングは我が槍で討ち取った!仇を討つ者はいないのか!受けてたつぞ!」
ヤングが討ち取られた後に、部隊戦が展開された。その中でネクセラリアの声は不思議とよく通った。
ザッ……
3つの音が重なった。
カタギリ達がネクセラリアの前に躍り出た。隊長の任は副隊長に代行させた。
3人を見てネクセラリアの顔色がわずかに変わった。
「おまえたちは…!」
「???」
兵士達の一部はネクセラリアとカタギリ達が何か話しているのを見た。が、何を話しているのかは聞こえなかった。
「勝負だ!今度は………として!」
兵士達が聞けたのはネクセラリアの叫んだこの言葉だけだった。完全には聞こえなかったが。そして、この言葉と同時にカタギリとレンが、ネクセラリアの所から小隊隊長の位置へと戻ってきた。
そして、シンとネクセラリアの一騎打ちが始まった。
ブオンッ…
ネクセラリアの初撃のなぎはらいは空を切った。シンはジャンプして、ネクセラリアに詰め寄った。シンは武器の双刃槍の柄の、中心より少し外側を持った。
ガッ…
右手を前に出すようにして刃を当てようとしたが、ネクセラリアも柄の部分を縦にして、シンの攻撃を受け止めた。シンは柄を回転させて、逆サイドの刃を相手側に向けて、そっちを相手に当てようとした。
だが、後ろに下がったネクセラリアの元いた場所を切るだけになってしまった。
「…これで終わりだっ!!」
ネクセラリアはレッドイリュージョンを出そうとシンに近づいた。
ギガガガガガガッドスッドスドスッ…
ヤングとの戦いでついた傷は、レッドイリュージョンの速さを少し落としたが、全てを受けることは出来なかった。
「かふっ…」
ひるんだシンにとどめを刺そうとネクセラリアは突きを出した。
シンは跳んだ。最初のなぎはらいを避けたように。そして、シンは縦に斬りつけた。
ガキッ…
だが、この攻撃もネクセラリアに止められてしまった。
(勝った!)
ネクセラリアはそう思った。
しかし、シンは「止められたら」を考えていた。
双刃槍の止められたほうの刃を反動を利用、地面に刺し、腕力で空中に浮き、腹筋を使って仰向けの体勢でキックを当てた。0.2秒で着地。すぐに刺さっていた刃を抜き、その刃に力を集中させるために、手を上にずらした。再び、縦切りがネクセラリアに迫った。
今度は入った。遠心力と両手持ちの効果で、この縦切りは致命傷になった。
ネクセラリアはがっくりと大地に伏した。
「かはあっ…ヤングよ…よい部下を…持ったな…」
ヴァルファの陣から士気が落ちた。
カタギリとレンはそれを見逃さなかった。
「今だ!一気に駆け抜けろ!みんな、生き延びるんだ!」
「…………」
ネクセラリアは何か喋ったが、ドルファン軍の敗走の音によってかき消された。
結局、ドルファンはイリハ会戦で敗北した。
だが、戦果にネクセラリアの首級があったのは軍の上層部を喜ばせることになった。
カタギリとレンは部隊の生還、シンはネクセラリアを討ち取ったとして、多めに勲章をもらった。
カタギリ達の名前が、この日から有名になり始めた。
あとがき
O2 星輪です。
突然ですが、懺悔です。
恋愛シーンが全くないのに気付きました。このゲームの本質、忘れてました。
でも、書けません。1話の「予定」にあった7話までの話、ほとんど、この「3話」みたいな感じです。
4話「三人の過去」は一応カタギリ達とソフィアの会話シーンの予定です。
が、たぶん自分にラブストーリーは書けません。すいません×100×読者の数。
そして、シンの双刃槍。わかりにくい描写ですいません。
風車のような形をしているというイメージです。「4」と「4」を上下左右反転させたやつを上下に組み合わせた形と言えばもうちょっとわかりやすいかも。
さらに、必殺技もない(予定)主人公達…。
こんな中途半端な作品ですが、読んでくれた方、本当にありがとうございます。
悪い評価は、耐えられるぐらいなら踏み台にして上手くなっていくつもりなので、だめなところがあったら遠慮なく評価してください。
10月30日 自室にて