釈然としないまま日数が経過してしまい、気付けば初めての日曜日を迎えていた。
朝からブルーの入っていた俺は、管理局員から貰った地図と
『サルでも分かるドルファン攻略マップ』という怪しげなガイドブックを手に取り、街へと散策に出掛けた。
取り敢えず、『ドルファン国立公園』という所にでも行って、ボーッとソフィアの事を考えよう。
嗚呼、空は雲一つない程澄み渡っているのに、俺の心の中には暗雲が立ち込める。
そんな思いに支配されながらフラフラ歩いていると、目の前にドルファン公園が飛び込んで来た。
しかし次の瞬間、俺の中の暗雲は一気に消え去った。ソフィアだ!
ガイドブックに載っている『トレンツの泉』という所に一人で向かっている。
こうなったら、この前の爬虫類について聞いてみよう!
例えその答えが認めたくない事実でも、このままよりはマシだ!
俺は、意を決してソフィアの元に歩み寄った。
「やっ、やあソフィア。偶然だね。」
ワザとらしい…
後ろめたさは全然無いのに、妙にぎこちなくなってしまう。
「あら?アスタさん。どうしたんですか、こんな所で?」微笑みを浮かべながら聞いてくる。
「あっ、あの、その…」
「ちょぉぉぉっと待ちたまえ!」言葉に詰まる俺の背後から、記憶に新しい嫌な声が響いてきた。
まさか…
「ジョアン・エリィィィタス、華麗ぃに見参んんんっ!」そう言って、そそくさとソフィアの側に歩み寄る。
「ジョアン!?」
ソフィアは驚いた様な表情になり、俺は心の底から呆れ返った顔をする。
成る程、こいつの名前はジョアンと言うのか。それにしても随分とタイミングよく出てきたな。
まだ、一言二言位しか話してないのに……。
こいつ、ソフィアのストーカーなんじゃないのか?
それに、この薔薇の花びらは一体どこから何処から出したんだ?
だが、俺の事などお構いなしに、ジョアンは一方的にソフィアを問い詰めていた。ソフィアの表情が段々と曇っていく。
すると、急に俺の方に向き直る。
「そこの東洋人!」人差し指を立てて俺に突き付ける。
「知らないのなら教えてやろう!ボクは、この国屈指の財閥『エリータス家』の三男だ!
その婚約者と一緒に出歩こうとは、広井王子が許してもこのボクが許さんっ!」
婚約者ぁ!そんな馬鹿な!こんな男の何処が…。
真意を探ろうとソフィアの顔を見ると、表情をさらに暗くした。
と、言う事は……
「大体、貴様は彼女のなんなんだ!」俺の考えを遮るように口を挟んできた。
血眼になって俺の事を睨み付ける。今にも、先が二つに割れた細長い舌を出してきそうな勢いだ。
「俺は……俺は彼女の恋人候補だっ!」
風雲急を告げるSS。アスタの運命は如何に?
続く……