奇稲田アスタ作品集

第15回


緊急招集召集により、イリハに向かう事になった。

自国ドルファンがダナンを奪回する為に騎士団を派遣。

敵国のヴァルファバラハリアンはプロキアの撤退要求を無視し、ダナンの南方にあるイリハに布陣していたのだった。

ヤング上官の指揮のもと、俺達騎士団がイリハに到着した頃には、既に戦火が渦巻いていた。

そんな中、戦火の炎にも屈しない程の真紅の鎧を着込んだ男が、部下達の指揮を執っていた。

緑色の髪の毛に、吊り上がったきつい目つき。手には槍を持ち、イリハの崩壊を黙って見つめていた。

その折り、ドルファン軍の歩兵、弓兵、騎馬兵の3部隊がヤング上官の支持を待たず、

ヴァルファの部隊へと突き進んでいった。

ヤング上官は部下達の行動に叱責を与える事無く、鎧の男をジッと見据えていた。

すると、ドルファン軍の到来に気付いた様に、鎧の男が俺達の方を向き口を開いた。

「聴けぇっ!ドルファンの犬ども!我が名は疾風のネクセラリア!

 我が槍に挑まんとする勇者はここにはいないのか?」

すると、今まで沈黙を守っていたヤング上官が、突如口を開いた。

「ネクセラリア!この俺が相手をしよう!」

その言葉に反応する様に、ネクセラリアが口元に笑みを浮かべる。

「ヤング・マジョラム大尉か…。ハンガリアの狼が、今やドルファンの一部隊長とはな…」

「黙れっ!かつて同僚の貴様に、俺の手で手向けの華を添えてやるっ!」

「面白い…。ハンガリア時代の決着を、今日ここでつけてやる!」

ヤング上官が抜刀して、ネクセラリアが槍を構える。

あっ、いけね!俺、歩兵として出兵するんだったけ…。

まぁいいや。なんか終わってるみたいだし。

そんな事を殺伐と考えている間にも、2人は睨み合ったまま微動だにしない。

その緊張が頂点に達した時、ヤング上官が先に動いた。

「でやぁぁぁぁぁっ!」

剣を上段に構え、ネクセラリアに突進して、一気に間合いを詰める。

そして、開口一番獣の咆哮にも似た叫びをあげる。

「じゃぁぁんけぇぇぇん!」

はい?

「ポンッ!」

二人同時に空いた方の手を出す。結果はヤング上官の勝ちだ。

…まさか、これで終わりじゃないだろうな…?

すると、ヤング上官は笑みを浮かべながら、剣を強く握り直す。

片手で持った剣を振りかざすと、信じられない事を口走った。

「あっち向いて、ホイィィィッ!」

剣を地面に向けると、ネクセラリアは天を仰ぐ。

オイオイ…

武器使わなくても出来るだろうよそんな事…。

って、言うか、お前らそんな事で決着つけるんかい!

だが、俺のそんな思惑とは裏腹に、奴らはそのまま続けていた…

そして、そのアホらしい…、いや、激しい死闘は数時間にも及び、両者の体力も限界に近付きつつあった。

両者とも進展がないままに185回目を迎えた時に、変化が訪れた。

ネクセラリアがジャンケンに勝った瞬間、奴の目が鋭く光った。

「これで終わりだぁぁぁぁぁぁぁぁぁっ!」

魂の叫びにも聞こえる咆哮と同時に、槍を天に向ける。

すると、ヤング上官はつられて天を仰いだ。

ヤング上官の顔が醜く歪む。あからさまに『しまった』という顔つきだ。

そして、そのまま片膝をついた。

「ヤングよ、冥途で遭おう…」

なにクールに決めてんだ?コイツは…。さっきまで、馬鹿っぽい事してたくせに…。

「クッ、クレアァ…すまんっ…」

そう言い残して地面に倒れ込む。挙げ句に微動だにしない。って、死んだんか?そんなんで殺られたんかいっ!

こいつら、アホだ…。

額に汗浮かべてまでやるか?こんな事…

すると、ネクセラリアが眼孔を鋭くして、言い放った。

「ヤングは我が槍で討ち取った!誰か仇を討つ者はいないのか?受けて立つぞ!!」

いや…あんた槍で討ち取ったって…。まあ、確かに槍は使ってたけどさぁ…。

他の連中は呆れ返って、帰る身支度を始めている。俺も帰ろうかな…?

でも、それじゃあ今後のストーリー展開に響くからなぁ…。

まぁあんな勝負だったら俺でも勝てる見込みはあるな。

俺は、ネクセラリアの元に歩み寄ると、口を開いた。

「俺の名は奇稲田アスタ!俺がヤング上官の仇を討つ!」
 

続く……

 

次回予告
 

ソフィア「アンさん。私も歌を歌ってみようと思うんです…」

アン「よく言った!ジョニーっ!」

ソフィア「ジョニーって誰だぁっ!」

アン「知るか!ボケ!」

ソフィア「なら言うなぁっ!」

アン「てな訳で次回『呼び戻せ!北方領土!』にチャクラァァァオンッ!」    


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