奇稲田アスタ作品集

第16回


「俺の名は奇稲田アスタ!流浪の芸人だっ!」

ネクセラリアの顔に怒りの色が浮かぶ。

「貴様ぁっ!前回のラストと台詞が違うではないかぁっ!」

「細かい事をいうなっ!それより、俺が相手だっ!」そう言って抜刀する。

まあ、取り敢えず形だけでも整えておこう。どうせ、あっち向いてホイなんだろうから…。

俺に合わせる様に、奴も槍を構え直す。そして俺の事を睨み付けてきた。

互いに動かず、辺りが不気味な静寂に包まれ始める。その静寂を打ち破る様に、奴が仕掛けてきた。

「でりゃぁぁぁぁぁっ!」

最初はグーか?それともチョキか?奴の深層心理を読もうと、考えを巡らせ始めた。

その刹那、奴の槍が空を裂いた。

無防備だった俺は、一瞬何が起こったか分からず、呆然と立ち尽くしているだけだった。

顔の横に衝撃が走る。視線を横に向けると、奴の槍が不気味に光り輝いていた。

額から汗が流れ、首筋まで垂れる。

「チョット待てよ!あっちむいてホイじゃ無いのかよ!」我に返った俺は、真っ先に質問した。

すると、奴の顔が紅潮した。

「馬鹿野郎!あんな事、二度とやるか!」

「話が違うじゃねぇかぁっ!」

「黙れっ!貴様も殺してやるっ!」

そう言って、俺の目前に槍を突き付ける。奴の目は殺気に満ちていた。

さっきまでのアホらしい面影など微塵にもない。目に見えない奴の威圧感に押し潰されそうになっていた。

やけに喉が乾き、唾を何度も飲み込み始める。さっきまで鷹を括っていた相手に恐怖を感じ始めているのだ。

奴は、俺の目前から槍をずらそうとはしない。この場で逃げ出しても、間違いなく背後から貫かれるだろう。

ならば、只殺されるより、一矢報いた方が良い。

俺は、握っていた剣で奴の槍をはね除けると、ゆっくりと奴の方に剣先を向けた。

奴が口元に笑みを浮かべる。

「死ぬ覚悟が出来た様だな…。ならば望み通り殺してやるっ!」

弾かれた槍を構え直し、俺を凝視する。

さっきまで楽観的に構えていたのでなんともなかったが、今は違う。

まるで窮地に立たされた様な錯覚に襲われているのだ。

しかし、そんな恐怖感を拭い去るように、今度は俺から仕掛けた。

「うりゃああぁぁぁぁっ!」

中段に構え、奴に突進する。何も考えていなかった。

只、目の前の敵を倒したい気持ちが先走っていたのだ。

間合いに入った瞬間、奴の槍が襲ってきた。

それを辛うじて交わすと奴の胸部に剣先を突き刺した。

ガキイィィィィン!!

鈍い金属音が辺りに響き渡り、鎧に阻まれた剣先から火花が散る。

俺の一撃は、奴の鎧に傷を付けただけで、致命傷を与える事は無かった。

奴は表情一つ変えず、懐に潜り込んだ俺の方を向いた。

「ほぉ…俺の一撃を交わすとはな…」

そう言いながら体勢を立て直し、槍の柄で俺の事を突き飛ばす。

俺は、よろけながらも剣を握り直した。

効いていない。鎧ごと叩き斬らないと駄目なのか?

そんな考えが頭を過ぎった瞬間、奴が不気味に笑った。

「だが貴様では役不足だ!死ねえぃっ!」

 

続く…

 

次回予告

アスタ「セーラ!」

セーラ「来ないでっ!来たら撃つ!」

アスタ「ねーだろ!銃も何もぉっ!」

セ−ラ「私の半径3メートル以内に入ったら飛び降りる!」

アスタ「バカな事はやめろっ!」

セ−ラ「バカって言うな!アホって言えーっ!」

アスタ「細かいわぁっ!こんな時にっ!」

セーラ「そう言う訳で、次回『イトー○ーカドー大安売り』にレディィィGO!」


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