この地に足を踏み入れてから3年の歳月が流れようとしている。ドルファンに来てから3回目の秋を迎えた。
何故かしら感傷的になり、人恋しくなるのは何処の国でも同じなのか……
そんな折り、街中を散歩していると、不意に背後から声をかけられた。
「あっ、あの…。アスタさん……」
聞き覚えのあるオドオドした口調。それでいて透き通る様な声。
俺が振り向くと、エメラルドブルーの髪の毛が視界に飛び込んできた。
「あっ、アンか。どうしたんだ?」俺は努めて優しく問いかけた。
でないと彼女が逃げ出してしまいそうだったからだ。
「すっ…すいません…。呼び止めてしまって…」
彼女は些細な事にまで謝罪する。そこが彼女らしいのだが…。
しかし、彼女はそれ以上喋ろうとしない。俺が次の言葉を待っていると、決心したかの様に口を開いた。
「あっ、あの…。今度の日曜日…私と・・・。」
「私と?」俺は、思わず聞き返してしまった。
「私と…、海を見に…行きませんか…?」
そう言うと、頬を真っ赤に染めながら俯いてしまった。身体が微かに震えている。
彼女にしてみれば、勇気を振り絞った行動なのだろう。
俺は、彼女の言葉に答えるように返事した。
「ああ、いいよ。」するとアンは、恥ずかしげに顔を上げた。頬が更に朱身を帯びている。
心なしか瞳も潤んでいるように見えた。
「ほっ、本当ですか?有り難う御座います。」嬉しそうに微笑むアン。
「私…、今度の日曜日楽しみにしています。それでは、失礼します。」
そう言って、深々と頭を下げると街中へと歩み去った。
その背中を見つめながら(ソフィア…ゴメン…)と心の中で謝罪した。
ソフィアに対する罪悪感から逃れようとする自分が情けなかった。
しかし、この時点で俺は、神から見放されていた…
続く…